ベトナム人中級学習者の説明文の読解上の問題点 -ホーチミン人文社会科学大学日本学部 年生と 年生を例にして- トラン グエン バオ ヴィ 要旨 本研究ではベトナム人中級学習者の読解上の問題点を明らかにすることを目的に、本校の 年生と 年生を対象とした 段階尺度形式のアンケート調査と 人で読んだ読み活動にお ける発話調査を行った。その結果、学習者自身は言語知識の不足、背景知識の不足が問題だ と意識しており、これらの問題は発話調査で実例が観察された。また、学習者は文章の論理 の展開、代名詞の理解、内容の理解度の把握という問題を意識していないが実際には多く観 察された。さらに、発話調査からアンケート調査の項目になかった自分の推論が矛盾してい ることに気づかない、解釈において大事な所が飛ばされる、いくつかの単語で情報を作る、 背景知識を過剰使用するという問題も観察された。 〔キーワード〕読解、問題点、ベトナム人中級学習者、アンケート調査、発話調査 はじめに 筆者は大学の日本学部の学習者から、2 年生になり中級レベルに入ると、読むことが難し くなり、困っているという声を多く聞いた。また、筆者が 年生の読解授業(メインテキス トはスリーエーネットワーク 『みんなの日本語シリーズ初級 II-初級で読めるトピック 25』 、 及び『みんなの日本語シリーズ中級 I』 )を担当した際にも学習者自身は文章の内容を理解し たつもりでも、実際には充分理解していないという状況があることが観察された。 そこで筆者は、読解上の問題点について 年生(約 720 時間学習)と 年生(約 1080 時間 学習)を対象とした自由記述型の調査と、3 年生の読解授業(メインテキストはスリーエー ネットワーク『みんなの日本語シリーズ中級 II』 )の担当教師を対象としたインタビュー調 査を行った。その結果、学習者の自由記述からは学年を問わず、語彙、文法、漢字に関する 問題についての記述が多く観察された。一方、3 年生の読解授業の担当教師へのインタビュ ー調査では、 「学習者にどんな問題があると思いますか」という質問に対して、 「文章の大意 はわかるが、詳しい情報が捉えられない」という意見と、 「難しく慣れていない文章だと、具 体的でわかりやすい情報を捉えるだけで、文章全体の意味が把握できない」という正反対の 意見が出された。 つ目の調査で、学習者は自分の読解が困難な理由は言語知識に関するものだと考えてい ることがわかった。しかし、筆者の授業では、文章中の単語の意味を与えたり文型を説明し たりしても文章の内容を正しく理解できていないケースも尐なくなかった。2 つ目の調査で は、教師も学習者が中級レベルの読解のどのようなところに問題があるのか、明確に把握で きていないことがわかった。学習者の読解力を伸ばすためには、何らかの授業改善を行う必 要があると思われるが、そのためには、まず、中級レベルの学習者が、読解でどのようなと ころに引っかかるのか、実態調査で明らかにする必要があると思われる。 先行研究 読解が困難である原因には、どのようなものが考えられるのであろうか。これまで第 言 語学習者の読解上の問題について様々な研究がなされてきた。 英語教育では、飯島(2003、2004)が日本語を母語とする英語学習者を対象としたアンケ ート調査を行った。得られたデータについて因子分析を行った結果、英語論説文の読解阻害 要因は「テクスト情報統合因子」 「学習意欲因子」 「スキーマ活用因子」 「抽象度因子」 「情意 因子」という つのカテゴリに分けられた。また、飯島(2006)は飯島(2004)と同様の調 査票を用いて、1 年生と 年生の大学生 359 名を対象とした調査を行った。得られたデータ について再度、因子分析を行った結果、読解阻害要因は「情報統合能力因子」 (個々の情報を 互いに関連付け、より大きな単位で全体的な意味を把握する能力) 「スキーマ活用能力因子」 (背景知識の有無・利用) 「ボトムアップ処理因子」 (情報統合能力の基礎となる因子) 「動機 づけ因子」 (学習意欲や動機づけ)という つの因子に絞られた。 日本語教育では舘岡(2005)が様々な研究成果を重ねた結果、日本語学習者にとっての読 解上の問題点を「自動認識スキル」 「語彙・文型知識」 「談話構成知識」 「内容・世界背景知識」 「統合・評価スキル」 「メタ認知」という 点にまとめている。そのうち、 「自動認識スキル」 は日本語の単語、文字を認識するスキルに関連する問題である。 「語彙・文型知識」は未知語・ 未知文型の割合が大きければ、理解するのが難しいということである。 「談話構成知識」は文 章の構造についての知識、 「内容・世界背景知識」は文章の内容(事実、出来事、状況など) についての知識である。 「統合・評価スキル」は読んでいる文章を評価するスキルのことで、 読み手が読む内容を既有の知識や情報と比べないで読んでいくと、理解につながりにくいと 述べられている。さらに「メタ認知」は自分の読む過程や使うストラテジーをコントロール する能力である。また、近松(2003)は日本語の文章読解の成否に関する要因には非言語的 要因(文章構造知識、既存知識)及び言語的要因(表記知識、単語・漢字知識、文法・統語 知識)があると述べている。 これらの先行研究で述べられている学習者の読解上の一般的な問題を整理すると、言語知 識(語、漢字、文法を解読することに関連する問題) 、スキーマ活用(背景知識・文章構造知 識の有無・利用に関わる問題) 、情報統合(解読した情報をつなげて理解することに関わる問 題) 、メタ認知(自らの読みの状況と読み方のコントロール) 、動機づけ(学習意欲や動機づ けに関連する問題)という つのカテゴリにまとめることができる。 研究課題 上述した研究背景に基づき、本研究では、本学の中級の日本語学習者はどのような読解上 の問題を有しているのか、調査を行うこととした。この問題について探求するために、以下 の研究課題を設定した。 ①学習者は、日本語の説明文を読む際の自分の問題をどのように意識しているか。 ②学習者が日本語の説明文を読む過程では、実際にどのような具体的な問題が生じるか。 この問題は、先行研究でまとめた つのカテゴリで検討する。また、本研究では、学習者 のニーズ(在学中に専門科目の参考書を読んだり、卒業後に企業の資料を読んだりする必要 があること)を考慮し、対象とする読解文のジャンルを説明文とした。 研究方法 4.1 これまでなされてきた研究方法 これまでなされてきた第 言語学習者の読解上の問題点の実態調査の研究は主に つの方 法がある。1 つ目はアンケート調査の方法である。小宮(1996)は 31 名の経済学部の日本語学 習者を対象にして、読解上の問題点と学習者が解決するために使ったストラテジーを明らか にするための方法の一つとしてアンケート調査を用いた。小宮の質問票は 15 問あり、語彙、 文法、文章の構造、背景知識というカテゴリに分けられる。 「2 先行研究」で取り上げた飯 島(2003、2004)は日本人 EFL 学習者の読解阻害要因についての調査票を開発した。この調 査票は 33 項目からなる 段階尺度形式である。飯島(2006)は同様の調査票を使って、調査 結果の因子分析も行っている。 これらの先行研究を参考としたアンケート調査を行うことで、 学習者はどの程度で読解上の問題点を意識しているかを把握することができると思われる。 つ目は Think-aloud 法である。舘岡(1995)は、この方法を使って、上級学習者の読解 過程を研究した。 明らかにしようとした点は日本語の文章の構造に対して違和感を感じるか、 文章理解に支障をきたす要因は何かという点である。和氣(2013)は Think-aloud 法を使っ て、中上級の日本語学習者が、読解中にどのような読みの困難が生じるか、またその困難は、 読解処理にどのような影響を与えるかを研究した。しかし、Think-aloud 法は調査対象者が 事前にトレーニングを受ける必要があり、筆者の勤務校の学生を対象とした場合、実現可能 性が低い調査方法であると考えた。 そこで、Think-aloud 法以外の発話を用いる調査方法として、ピア・リーディングの効果 を検討した研究を参考にした。これらは元々は本研究の目的と違って、ピア活動に焦点をあ てている研究だが、収集された発話データにはパートナーと自由に話す中で不明な点を確認 する様子が多く観察されている。例えば、高崎 (2004)ではタイの大学で日本語を学ぶ中級日 本語学習者 12 名を対象に行ったピア・チュータリングの調査の中で、2 人の学習者が不明な 点について話したり、自身が理解した内容を相手に説明したりする例が観察されている。ま た、羅 (2009)は、台湾の大学で学ぶ中級日本語学習者 63 名を対象に、ピア・ラーニング の研究を行っているが、学習者の発話からは、単語、文型、修飾節、文の主語・述語、文章 構造について確認する様子が多く観察された。このようにペアで話す会話では、学習者がパ ートナーと協力して読み進めるため、その発話ややりとりの記録をとることで、学習者が理 解できていないところが必然的に明らかとなる。また、この方法は上述の Think-aloud 法と 比べ、本学の学習者にも取り組みやすいと考えられる。そこで本研究では、ペアで文章を読 み進める課題及び文章内容をまとめる課題を与え、その際の発話を分析することで読解上の 問題を調べることとした。 4.2 本研究の研究方法の概要 4.2.1 アンケート調査 (1) 調査票:27 項目、5 段階尺度形式である(添付資料 を参照) 。 調査票の質問は、因子分析で抽出された飯島(2006)の質問項目と飯島(2006)にはないが 日本語学習者にとっては影響があると考えられる飯島(2003)の項目、小宮(1996)の項 目を整理した項目及び筆者が行った予備調査の自由記述から作成した項目が含まれている。 (2) 対象者:対象者の学年及び習熟度は以下のとおりである。 学年/JLPT 合格者数 合計 N2 N3 N4 N5 JLPT 未受験者/不合格者 年生(約 720 時間学習) 87 13 39 27 年生(約 1080 時間学習) 62 41 11 4.2.2 読み活動における発話調査(以下は発話調査) (1) 読解材料:使用した文章は学習者が現在学習している教科書のレベルに合わせて選択し、 日本語読解学習支援システム「リーディングチュウ太」 (http://language.tiu.ac.jp/)を用 いて、文章の語彙の難易度を確認した。各文章の語彙の難易度( 「リーディングチュウ太」の 尺度) 、ルビと語彙リスト作成の基準は以下のとおりである。 学年 文章 語彙の難易度* ルビ 語彙リスト 旧 JLPT 旧 JLPT 級~級外 1級~級外 旧 JLPT 旧 JLPT 級~級外 級~級外 「江戸の生活」 (以下は「江戸」 、手島安基(1995) 『日本語長文読解の森:その作成と例題』 、静雅 堂、105-106) 「握手」 (以下は「握手」 、産能短期大学(2005) ふつう 『日本語を学ぶ人たちのための日本語を楽しく 読む本・中級』 、凡人社、82-83) 「フリースクールってなあに?」 (以下は「フリースクール」 、近藤安月子、丸山 千歌(2008) 『中・上級日本語教科書:日本への 招待』 、東京大学出版社、62-63) 尐し難しい 「避けたがる他人とのかかわり」 (以下は「他人」 、近藤安月子、丸山千歌(2008) 『中・上級日本語教科書:日本への招待』 、東京 大学出版社、99-100) *語彙の難易度は主に 段階で評定されていると思われ、筆者が各学年 の学生にとって選択した文章が適切なレベルだと判断した。 (2) 対象者:調査参加者は 学年 名、計 16 名であった。 学年 ペア 年生 HD-TV 学生 HD TV JLPT 未 受 験 未 受 験 GD-AT GD AT N4 未 受 験 年生 HN-MT HN MT N4 未 受 験 HB-TL HB TL N3 未 受 験 PT-MTR PT MTR MT-VA MT VA HP-BA HP BA TR-BN TR N3 N3 N3 N2 不 合 格 BN N3,N2 N3 N3 N2 不 合 格 トップダ ウン読み 握手 握手 江戸 江戸 他人 他人 フリー スクール フリー スクール ボトムア ップ読み 江戸 江戸 握手 握手 フリー スクール フリー スクール 他人 他人 (3) データの取集方法 1) つの読み方について 読解上の問題を調べる際、 読み方の違いによって生じる問題も異なる可能性を考慮して、 以下に記述するように、同じペアにボトムアップの読みを促す手順とトップダウンの読み を促す手順を 回ずつ行うこととした。ボトムアップ処理の読み方をした場合、語彙、文、 段落などの理解に関わる問題が、またトップダウン処理の読み方をした場合、文章全体の 理解、背景知識の使用などに関わる問題が表れるのではないかと予測した。 2) 手順(回答シートは添付資料 3.1、3.2 を参照) 2-1)トップダウンの読み方を促す読みの手順 ①学習者はタイトルを読んで思いついたこと、連想したこと、このタイトルの文章の内 容について推測できることを 5~6 分で回答シートに箇条書きで書く。使用言語はベト ナム語でも日本語でもかまわない。書き終わった回答シートはすぐに回収する。 ②学習者は各自、辞書を使わずに、15 分で文章を読み、ベトナム語で「 『話題』 (文章に よって異なる)についてわかったことをこの文章を読んでいない人のためにわかりや すく、詳しく(図、表、箇条書きなど)まとめてください」という課題に取り組む。 ③ペアになり、各自が書いた個人の回答とその理由や根拠を説明してから、ペアの回答 を出すために話し合う。この段階で辞書を引いてもよい。時間制限はない。また、2 人の意見が異なり、調整しきれなかった場合、それぞれの意見を併記する。 ④読んだ文章の内容や構成についての感想を話す。 2-2)ボトムアップの読み方を促す読みの手順 ①学習者は 文ずつ交代で音読する。1 文を音読した後、文の内容について、1 人ずつ自 分の解釈と考えを言って確認しながら読み進める。時間制限はない。 ②1 つの段落を読んだ後、その段落に書かれていた内容について、1 人ずつ自分の解釈と 考えを言ってから、相談して回答シートにまとめる。 ③最後まで読み終わったら、トップダウン処理の読み方の調査と同様の課題に取り組み、 ベトナム語で一つの回答シートにまとめる。辞書が必要な場合は使ってもよい。 ④読んだ文章の内容や構成についての感想を話す。 3) データ 分析に用いたのは、上記の手順で読解を行う最中の発話であった。まず、発話をすべてを 文字化した後、トップダウンの読みを促す読み(以下、TD)では、各自で作成した回答を 人で つに集約するために、 自分の回答の理由や根拠となる自分の解釈を説明している部分、 ボトムアップの読みを促す読み(以下、BU)では、1 文ずつ自分の解釈と考えを言って確認 している部分、および各段落の内容や全体の内容をまとめるために、各自の解釈を述べてい る部分から、学習者がまちがった理解をしたり混乱したりしていることがわかる箇所や、理 解できなかったところを相手に確認している箇所を分析対象のデータとした。 調査結果 5.1 学習者が意識している読解の問題点 収集されたデータについて、各質問項目の平均値と標準偏差を算出した(添付資料 を参 照) 。質問紙調査では、 「1:全く当てはまらない」、「2:ほとんど当てはまらない」、「3: ど ちらかといえば当てはまる」、「4: やや当てはまる」、「5: よく当てはまる」という 段 階尺度を用い、調査参加者には何れか つを選択するよう求めた。そのため、平均値が 3.00 以上の場合、その項目について「当てはまる」と意識している学習者の割合が大きく、平均 値が 3.00 未満の場合、その項目について「当てはまらない」と意識している学習者の割合が 大きいという基準を立てた。 質問項目は 2.先行研究を参考に以下のように分類した。 カテゴリ 内容 質問項目 言語知識 語、漢字、文法を解読することに関連する問題 2、7、1、15、22 情報統合 解読した情報をつなげて理解することに関わる問題 5、11、23、25、3、9、16、20 スキーマ活用 背景知識・文章構造知識の有無・利用に関わる問題 4、6、10、13、27 メタ認知 自らの読みの状況と読み方のコントロールに関わる問題 8、12、14、18 動機付け 学習意欲や動機づけに関わる問題 17、19、21、24、26 5.1.1 言語知識に関連する問題点 このカテゴリでは全ての項目について、学習者が「当てはまる」と意識している割合が大 きいことがわかった。このことから学習者は文・語彙レベルの処理を読解が困難である原因 と意識していることがわかる。これは現場での語彙・文法知識に自信がないという学習者の 声と一致している。これらの項目の中でも、 「語彙力が不足」 (問 1)の平均値(3.99)が特 に高く、学習者は語彙力の問題を強く意識していることがわかる。また、文法に関連する項 目に着目すると、 「文法の知識が不足」 (問 2)の平均値(3.55)より「複雑な文構造」 (問 15) の平均値(3.81)のほうが高かった。このことから学習者は自身の文法知識の不足より、日 本語の文の構造が複雑であることが難しさの原因であると考えていることが窺える。 5.1.2 情報統合に関連する問題点 このカテゴリの項目は言語を解読した結果を関係づけたり統合したりすることに関する項 目である。学習者が読解上の問題点として「当てはまる」と意識している割合が大きい項目 は、 「抽象的な意味の単語」(問 9)と「抽象的内容の文」(問 25) 、 「書き手の意図や真意」 (問 3)であった。特に、3 年生の「書き手の意図や真意」の項目の平均値は 3.77 で、この カテゴリで最も高かった。逆に、学習者が「当てはまらない」と意識している割合が大きい 項目は「文と文との相互の関係」(問 23) 、 「各段落の役割/段落相互の関係」(問 20) 、 「各 段落のトピックセンテンス」 (問 11)であった。 また、学年別の平均値に着目すると、 「文章全体の中での重要なポイント」(問 16)は 年 生の平均値が 3.08、3 年生の平均値が 2.89 と学年による違いが観察された。さらに、2 年生 では「書き手の意図や真意」と「文章の中での全体の重要なポイント」では平均値に差が見 られないが(両項目の平均値:3.08) 、3 年生では「書き手の意図や真意」 (3.77)は「文章 の全体の重要なポイント」 (2.89)より平均値が高く、区別して判断されている。このことか ら、3 年生は、 「書き手」という存在を意識しており、文章の重要なポイントよりも書き手は 一体何を伝えたいのかが難しいと感じていることがわかる。また、 「代名詞の理解」 (問 5) においても、2 年生の平均値が 2.83 、3 年生の平均値が 3.11 と学年による違いがみられた。 このことから、3 年生は「代名詞の理解」を読解が困難である原因と意識しているが 年生 はあまり意識していないことがわかる。 5.1.3 スキーマ活用に関連する問題点 このカテゴリの項目は文章の構造と文章の内容についての背景知識に関する項目である。 学習者が「当てはまる」と意識している割合が大きい項目は、 「背景知識の有無」 (問 4) 、 「未 知語の類推」(問 10)であり、学習者が「当てはまらない」と意識している割合が大きい項目 は、 「背景知識の利用」 (問 13) 、 「話の展開の予測」 (問 6)であった。これらのことから、学 習者は文章の背景知識が無いことや、未知語の類推が難しい場合に、読解が困難であると考 えていることがわかる。一方、自分が持っている背景知識をうまく利用できないことや文章 の論理の展開、話の展開の予測ができないことについては読解が困難な原因としてあまり意 識していない。さらに、学年によって差がみられた項目に着目すると、 「未知語の類推」 (問 10)は 年生の平均値が 3.30、3 年生の平均値が 2.87 であり、 「文章の論理の展開」 (問 27) は 年生の平均値が 2.85、3 年生の平均値が 3.10 であった。つまり、2 年生は未知語の類推 は難しいと思っているが、文章の論理の展開は難しくないと思っており、3 年生はそれと反 対の意見を持っているといえる。この背景として考えられるのは、2 年生がよく出会う文章 が 年生のそれと比べて論理展開がより簡単で 年生のレベルでも理解しやすい書き方のも のが多いことであろう。 5.1.4 メタ認知に関連する問題点 このカテゴリにある項目は読み過程のコントロールに関する項目である。 全 項目のうち、 「読んできた内容を忘れている」 (問 12) 、 「読む目的の認識」 (問 14) 、 「自分が読んだ内容の 理解度の把握」(問 18)は、学習者が「当てはまらない」と意識している割合が大きい項目 であった。このことから、学習者は自分の読みをコントロールできていると思っていること がわかる。学習者は読む前に読む目的を持って読み始め、読んでいる途中に読んできた内容 を振り返って確認することや、読んだ後自分の理解を正しく評価することができていると考 えているようである。一方、 「わからないところに遭遇したときの対応」 (問 8)は、全体の 平均値は 3.01 であったが、2 年生の平均値は 3.11、3 年生の平均値は 2.87 と違いがみられ た。2 年生は「わからないところに遭遇したときの対応」を読解が困難である原因として意 識しているが 年生はあまり意識していないことがわかる。 5.1.5 動機付けに関連する問題点 このカテゴリにある項目では、 「集中力の持続」 (問 26)以外の項目、すなわち「日本語の 学習への関心」 (問 17) 、 「文章の内容への関心」 (問 19) 、 「書き手の意見への評価」 (問 21) 、 「読解という作業への関心」 (問 24)のすべての項目で、学習者が「当てはまらない」と意 識している割合が大きかった。つまり、学習者は読解に対して、 「集中力の持続」は影響を与 えるが、日本語学習への関心、文章の内容への関心、書き手の意見への評価、読解という作 業への関心の程度は自らの読解にあまり影響を与えないと考えていることがわかる。 5.2 学習者の発話調査から見た読解の問題点 4.2.2 に述べた手順で発話データの中から拾った、学習者がパートナーに理解できないと ころについて確認している箇所、間違った解釈を述べる箇所で取り上げられている問題の出 現数を集計し、分析した(添付資料 を参照) 。出現数を数えるにあたっては、1)文章の か所に 種類の問題点が見られる箇所は つと数える、2)文章の か所に 種類の問題点が 何回も繰り返されて出現しても つと数える、3)文章の か所に複数種類の問題点が見られ る箇所は種類別に数えるという つの基準を採用した。また、今回の調査趣旨から、問題が その後の話し合いで解決されても、内容全体の理解に大きな影響を与えなくても、それぞれ の読解の問題だと思われる個所を全て数えた。なお、本報告では、文字化したデータを筆者 が日本語訳し、ベトナム語でのやりとり以外の原文をそのまま引用している箇所については カタカナで表記した。 4.2.2 でも述べたように、本研究では、読み方の違いが読解上の問題に影響を与える可能 性を考慮し、TD と BU の つの読み調査を行った。しかし、問題の種類及びその出現数を集 計した結果、どちらの読み方をさせた場合も、問題の種類とその出現数に大きな差が見られ なかった。TD では、トップダウンの読みになるように指示や課題を工夫したが、発話データ そのものは、その読み方で一通り読んだ上でまとめた回答をすり合わせる段階での話し合い から取ったため、互いの回答のずれを確認するために、場合によっては、ボトムアップ的な 読み方もせざるを得なくなった。そのために差が観察されなかった可能性が考えられる。 以下では取集されたデータの中で出現数が多い問題点を中心に、アンケート調査同様、先 行研究からまとめた つのカテゴリに沿って考察することとする。 5.2.1 言語知識に関連する問題点 発話調査でも、このカテゴリの問題の出現数が最も多かった。「単語の意味がわからない /誤解している」「単語に多くの意味がある」「文法の意味がわからない/誤解している」 「主語がどれかわからない」「文法に多くの用法がある」「意味の切れ目はどこにあるかわ からない」「漢字の読み方がわからない」「名詞修飾のある文がわからない」「文の意味順 番を逆に解釈する」という種類の問題が確認できた。このうち、「単語の意味がわからない /誤解している」「単語に多くの意味がある」「文法の意味がわからない/誤解している」 「主語がどれかわからない」の出現数が多かったため詳しく述べることとする。 5.2.1.1 単語の意味がわからない/誤解している 単語に関連する問題は未知語と単語の意味の誤解が観察された。未知語については、どの ペアにおいても共通して観察される単語が多かった。これらの未知語については、ほとんど 辞書を引くか友達に聞くことで解決できた。また、単語の意味の誤解は、未知語と比べると 出現数は尐ないが、文章全体の理解に影響を及ぼすことがわかった。その多くは「合う/合 わせる」「見える/見る/見せる」「思う/思いつく」などの他動詞と自動詞、または自発 動詞との間の誤解で、その結果、主語を取り違えてしまい、文章全体の理解にまで影響して しまうケースが観察された。これらは特に 年生に多く観察された。 例 1: HN-MT (BU・2 年生) 「握手」(p.82、4 No S 発話 ~6 行) 112 いいえ、そう思わない…その時…その時…その人を見て、握手する時…実は…まだ…心を 国会のなかだけで 通っていない…人を感動させない…と思う。たぶん なく、選挙民にも MT (中略) 政治家はすぐに握 119 HN たぶん、わかるように 手をしたがる。あ 120 MT …のため…私たちは相手を…見なければならない の姿をみていると 121 HN 相手を見る 握手とは、本当に 122 MT 受け入れなければならない…2 人はお互いに見るという意味?相手を… 心が通ってはいな 123 HN 握手だけでは足りない いのに、通ってい うん、自分も…この人はその人を見て、その人もこの人を見なければならない…ミエテク るようにみせなけ 124 MT ルは…相手の目線をもらわないと…人を見て、そしてその人が見てくれる ればならない相手 125 HN そうしたら、態度が… に対する行為のよ 126 MT アイコンタクトと言うんだね うにもみえてく 127 HN それによって る。 (添付資料 2.1) 128 MT それによってコミュニケーションができる…ココロガカヨッテ ここでは、「みている」「みせなければ」「みえてくる」という単語が出てくるが、学習 者はそれを区別しなかったので、それぞれの主語も文の構造も理解できず、無理に解釈しよ うとしている。 5.2.1.2 単語に多くの意味がある 複数の意味を持つ単語の理解についての問題も多く観察された。これらは音訓によって違 う意味を持つ単語、違う助詞を組み合わせると違う意味になる単語、概念が文章の内容によ って異なる意味を持つ単語などである。 音訓によって違う意味を持つ単語の問題は 「場」 「方」 「通う」「入ります」「間」などが観察された。違う助詞を組み合わせると違う意味になる 単語の問題は「以外と/以外に」「~を合わせる/と合わせる」などが観察された。否定と 肯定の意味を持つ単語の問題は「特別」などが観察された。このような複数の意味を有する 単語については、学習者が つの意味しか知らないなどの言語知識の不足が原因と考えられ るが、その他にも情報統合の能力も関与していると考えられる。複数の意味がある単語の意 味を正しく選択するためには、その前後の内容との関連性を正しく理解する必要があるため である。以下では、出現数が最も多かった音訓によって違う意味を持つ単語の例を示す。 例 2: PT-MTR (BU・3 年生) No S 発話 原文 113 MTR 日本にも…始める…ある…ハジメカタ?それともホウ? 114 PT ここから翻訳したらどう?カタから…ホウガ? 115 MTR ホウガ? 「フリースクール」 116 PT …メタホウガズイブンイマス (p.62、1~5 行) 117 MTR うん、でもそうしたら、あの「ほう」で書くんだよ 118 PT え、この「ほう」もいいんだよ…これでもいいよ…ホウガ…ホウガ…イマス これは説明文という文章の特徴から影響を大きく受ける問題である。使用した つの読み 物は、何れも複数の対象を比較しながら述べる文章であった。そのうち、3 年生用の「他人」 は文章構成自体が、比較的明確に区別できる構成であったためか、学習者は容易に情報を分 類できた。しかし、残りの つ(江戸、握手、フリースクール)は、構成や論理の展開を理 解することが難しかったようである。 例 9: TR-BN(TD・3 年生) No S 発話 188 TR 補習授業を受けるところ 189 BN 原文 学校に行かない人のための補習授業を受けるところ?学校に行かない人たちもいる…ほら、こ こ、次の文…例えば… 190 TR それなら、前の文と関係ないでしょう 191 BN うん、関係がない。だって… 192 TR この文を読んでみて…モチロンから 193 BN ほら。自分で勉強のことを決めるという意味だよね? 194 TR うん 「フリースク ール」 (p.62: 15~21 行、 p.63:1~5 行) 自分で勉強のことを決める場だから…行かない人を受けるところもある…学校に行かない人た 195 BN ちのための補習授業があるところもある…まあ、次の文を読もう…またわからなかったら… 196 TR つまり、このところはフリースクールと関係がなくない? 197 BN え?あるよ 198 TR あるの? 学習者は「補習的な授業」「出席日数の換算」「大検」「医療機関」についての情報は理 解できたが、それらが「日本の普通の学校」「日本のフリースクール」「欧米のフリースク ール」のいずれのことであるのか迷っている様子が観察された。それぞれのタイプの学校が 「ところ」「学校」「スクール」などの曖昧な言い方で表現されているため、学習者は文章 の流れをしっかり把握できず、理解できなかったものと考えられる。 5.2.3.2 背景知識が不足している/過剰使用 学習者は文法や語彙が原因で間違った解釈をしたとき、参考になる背景知識がないので、 違和感を持たずに最後まで読み進めてしまうことがあった。また、5.2.3.1 の問題のように どの情報がどの対象についての記述か迷う時も、背景知識を持っていないために、解決でき ないことがあった。また、背景知識がないため、文章の論理の展開がわからなくなる様子も みられた。 例 10: TR-BN(TD・3 年生) No S 発話 405 BN つまり、フリースクールとガッコウは違う?違うってそういう意味? 406 TR うん 407 BN だから 408 TR 活動が多ければ多いほどお金がかかる 409 BN うん…え?そうなの?つまり、学校と違うの? 410 TR うん 411 BN フリースクールと普通の学校と違うという意味だね?え?でも、どっちの方が多い? 412 TR (笑)このガッコウは 413 BN フリースクール 414 TR うん、フリースクールよ 415 BN うん 416 TR 原文 「フリースクール」 (p.62、6~8 行) え?つまり、各学校に違うところがあって…学校は活動が多ければ多いほど、お金が かかる この例では、学習者が、「活動が多ければ多いほどお金がかかる」ということ自体は当然 なのに、なぜ「学校と違うので」という対比した書き方がされているのかが理解できず、違 うのは「各学校」であると間違った理解をした。これは「普通の学校の活動」がどんなもの かわからないので、比較する理由がわからなかったためであろう。 また、2 年生では、背景知識に頼りすぎて、内容のほとんどを推論する様子が観察された。 例 11: GD-AT(TD・2 年生) No S 発話 アクシュ…「手」何とかだから、「手」と関係がある…(中略)選挙民と政治家とかのところに来ると…最初の 463 AT 部分を翻訳できた…2 人は握手する時は…たぶん1人の任期が終わって、その席をもらう人と…たぶん…何か渡 すだろうかと思った 464 GD 権力を? お互いに渡す…うん、権力を…なんとか…だから…信任とかがなかったので…なかったので…(中略)そして、 下に行くと…最初は握手が契約を結ばせるためにやるとかわからなかったから、その段落を飛ばした…次はキリ 465 AT スト教のところで…ここで…たぶん、手を握って、包んで…本とか映画とかで、牧師は信徒に手を差し出して… 信徒は神にわが身の罪を告白するとかあったらしく…たぶん、牧師は信徒の手を握ることは身分のシンボルで… 封建時代のところは読まなかった…そして、最後の手打ちとか手締めとかも握手と同じようなことで 466 GD 難しいね 467 AT うん この例から学習者は「政治家」「選挙民」という単語だけを読んで、選挙や政治家につい ての背景知識から「握手は信任という意味がある」と内容を推論して文章を読み進める様子 が観察された。このような例は 年生で多く観察された。5.2.2.1 では学習者がいくつかの 単語や文法を丁寧に解読しない現象が観察されたが、ここでは、TD を促したためもあってか、 学習者は単語、文法などだけではなく大きい段落まで読み飛ばした。彼らが読んだのはキー ワードだと思われたいくつかの単語のみであり、そしてその単語に自身の背景知識を合わせ て理解しようとしていた。 5.2.4 メタ認知に関連する問題点 メタ認知に関連する問題は、 「読んできた内容を忘れている」 「自分の推論が矛盾している ことに気づかない」であった。 「読んできた内容を忘れている」は 年生で1回のみ観察され た。また、 「自分の推論が矛盾していることに気づかない」は 年生のみで観察された。2 年 生は自分の誤解を客観的に確認することができず、間違った解釈のままとなっているケース が多かった。文章のレベルや構成から考えると 年生にとってそれほど複雑な文章ではなか ったが、自身の理解についての振り返りができていないために、次から次へと誤った解釈を してしまう様子が観察された。以下では「自分の推論が矛盾していることに気づかない」の 例を示す。 例 12: HN-MT (TD・2 年生) No S 発話 原文 だから、食べものに使う…食べ物に使うお金も…ない…ナイさよね?あ!わかった!たぶ 471 んこれは…生活…食費が高いけど、江戸に住んでいるから…米がなくて苦しいから食べ物 「江戸」(p.105、15 がなくて…生きなければならないから…お金を払わないと…たくさんお金を使っても何 ~17 行) HN も考えない…無駄だと思っていない…食べられれば…お金を払う…食べられれば この発話では、 「食べ物に使うお金もない ⇔ たくさんお金を使っても何も考えない」 、 「米 がなくて苦しい ⇔ 食べられればお金を払う」など自分自身の理解の中で矛盾が生じている にもかかわらず、学習者は気づかなかった。この学習者は最終的に、「米がなくて、とても 苦しかったけど、生きなければならないから、たくさんお金を使って米を買っても無駄だと 思わない」という無理矢理な解釈をしてしまった。 考察 以上の つの調査の結果を照合した結果、①学習者が意識しており、発話調査でも観察さ れた問題、②学習者が意識していないが、発話調査で観察された問題、③アンケート調査に 含まれていなかったが, 発話調査で観察された問題という つのタイプの問題が観察された。 6.1 学習者が意識しており、発話調査でも観察された問題 アンケート調査において学習者が「当てはまる」と意識している割合が高く、発話調査に おいても観察された問題についてカテゴリ別に述べる。 つ目は、言語知識に関する問題である。アンケート調査の結果、学年の違いにかかわら ず、言語知識に関する全ての項目について学習者は「当てはまる」と意識している割合が高 かった。 「1 研究の背景」で述べたように、3 年生の授業担当教師からは「文章の大意はわ かるが、詳しい情報が捉えられない」 「難しく慣れていない文章だと、具体的でわかりやすい 情報を捉えるだけで、文章全体の意味が把握できない」という一見矛盾した意見が述べられ た。しかし、これだけ語彙や文法に自信を持っていなかったり、文の中の文法を分解できて いなかったりするのだとすると、かなりの部分を推測に頼って文章を読んでいる可能性が高 い。その結果、語彙や文法がわからない部分は、詳しい情報が捉えられなかったり、わかり やすいところだけを拾って理解しているために全体が理解できていないことも尐なくないと 考えられる。また、発話調査では、 「多くの意味がある単語」は、具体的には音訓によって違 う意味を持つ単語、違う助詞を組み合わせると違う意味になる単語、否定と肯定の意味を持 つ単語の問題が多いこと、「単語の意味がわからない/誤解している」は、具体的には自動 詞、他動詞、自発動詞、名詞修飾など、 「文の構造が複雑である」に主語がわからない、修飾 名詞のある文がわからない、という問題が多いことがわかった。 つ目は、スキーマ活用に関する問題である。アンケート調査の結果、学習者は背景知識 を持たない場合には読解が困難となると意識していることがわかった。発話調査では、実際 に背景知識がないため、文章を理解できない様子が観察された。また、間違った解釈をして しまった場合にも、背景知識が無いために違和感を持たないまま読み進めたり、どの情報が どの対象についての記述か迷う時に確認できなかったりして、最終的に間違った解釈に至る ケースが観察された。 つ目はメタ認知に関する問題である。アンケート調査の結果、 「わからないところに遭遇 したときの対応」について、3 年生は「当てはまらない」と意識していたが、2 年生は「当て はまる」と意識している割合が高かった。発話調査でも、 「わからないところに遭遇した時の 対応のし方」について学年による違いが観察された。3 年生は精読することで理解しようと していたが、2 年生は背景知識を用いて解決しようとする傾向があり、文章に再び取り組も うとはあまりしていないことがわかった。 6.2 学習者が意識していないが、発話調査で観察された問題 アンケート調査においては学習者が 「当てはまらない」 と意識している割合が高かったが、 発話調査においては実際に観察された問題についてカテゴリ別に述べる。 つ目は、情報統合に関する問題である。 「代名詞の理解」について、アンケート調査では、 年生は「当てはまる」と意識している割合が高く、2 年生では「当てはまらない」と意識し ている割合が高かったが、発話調査では、学年の違いにかかわらず観察された。文章読解に おいて代名詞の理解は、前に出てきた名詞を指す対象の理解だけではなく、文章の情報の関 連性の理解にも関わる。3 年生の場合、 「代名詞の理解」が文章の情報の相互関係の理解に関 わることを認識しているようで、代名詞が指す対象を確認する様子が多く観察された。2 年 生の場合、3 年生と異なり「代名詞の理解」は文章の理解に大きく関わるものではないと考 えているようである。 つ目はスキーマ活用に関する問題である。 「文章の論理の展開」について、学習者、特に 年生は「当てはまらない」と意識している割合が高かった。しかし、発話調査では、どち らの学年でも、この問題が多く観察された。この問題は文章の構成の影響を強く受ける。今 回の調査で使用した文章は、異なる対象の情報を取り上げ、それらを比較しながら論じられ ていた。しかし、学習者は、現在読んでいる情報が何についての情報なのか、正しく整理で きていなかった。 つ目はメタ認知に関連する項目である。アンケート調査の項目の「自分が読んだ内容の 理解度の把握」ついて学習者は「当てはまらない」と意識している割合が高かった。そして、 読み実態の調査後のインタビューでも、実際には誤解しているところが多く観察されたにも かかわらず、8 つのペアが全員「文章の内容が理解できた」 、 「いつも読んでいるものと比べ ると割と簡単」と自己評価をしていた。このことから学習者は自身の解釈や理解が正しいか 否かを確認する意識がなく、メタ認知ができてないことがわかった。 6.3 アンケート調査に含まれていなかったが,発話調査で観察された問題 アンケート調査には含まれていなかったが発話調査から明らかとなった問題についてカテ ゴリ別に述べる。 つ目は,情報統合に関する問題である。2 年生では解釈において大事な言葉が飛ばされた り、いくつかの情報を使って情報を作ったりしている様子が観察された。 つ目はスキーマ活用に関する問題である。背景知識の過剰使用、先入観からの推論の つの問題が観察された。背景知識の過剰使用は主に 年生で観察された。 つ目は、メタ認知に関する問題である。2 年生において「自分の推論が矛盾していること に気づかない」という問題が観察された。 これらを見ると、2 年生は個々の単語や情報を丁寧に読まずに、理解しやすい単語や表現 を拾って、背景知識を用いてそれらをつなげたり、推論したりすることで情報を作り、そし て作った情報に矛盾があるかないかを常に確認しない様子が窺える。 まとめ ベトナム人中級学習者の読解上の問題点をアンケートと実際の読み過程での発話から調査 した結果、以下の 点が明らかになった。 1) アンケート調査で「当てはまる」と判断した学習者が多かった問題点は実際の発話調 査でも数多く具体的な例が観察された。例えば、言語知識に関連する問題では、学習 者が自動詞・他動詞・自発動詞の区別ができなかったり、名詞修飾などを含む複雑な 文であったりする場合に、主語がわからなくなることがあるケースがである。これら は特に 年生に多く観察された。スキーマ活用に関する問題では、背景知識が無いた め、自分の推論が矛盾していることに気付かないという例があった。メタ認知に関す る問題では、わからないところに遭遇したときに 年生は背景知識を用いて解決しよ うとする一方、3 年生は精読によって問題を解決しようとするという例があった。 2) アンケート調査の結果では学習者があまり意識していないと思われるのに、実際の発 話調査では観察された問題点としては、代名詞の理解ができないという情報統合に関 連する問題と文章の論理の展開が理解できないというスキーマ活用に関連する問題、 そして、自身の内容理解度の把握というメタ認知に関する問題があった。代名詞の理 解と文章の論理の展開の理解についての意識と実態の差は、2 年生では大きかった。 3) さらに、アンケート調査の項目には含まれていなかったが、発話調査のおいて、2 年生 に「自分の推論が矛盾していることに気づかない」 「解釈において大事な所が飛ばされ る」 「いくつかの単語で情報を作る」などの問題の例が散見された。この結果から、2 年生は自分の推論を確認しない、また、わからないところがあると、そこを飛ばして 解釈してしまったり、わかる単語と単語をつなげて自分で文を作ってしまったりする ことがわかった。 これらのことから、以下のような教育的示唆が得られた。1 つ目は読解を指導する時、文 を丁寧に読むために、文を分解して理解させるような練習も大事であるということである。2 つ目は、学習者に文章の情報のつながり、文章の構造などに注意を向けさせることである。 例えば、 「代名詞」や「文章の論理の展開」などについての設問や練習問題を設定することが 考えられる。3 つ目は、低学年の学習者は早い段階から自分の解釈を前後と照合しながら読 み進める習慣をつけさせ、読み飛ばして読んだり、背景知識に依存しすぎたりしないように 指導することである。 今回の調査では、アンケート調査と発話調査という つの手法を用いて、これまで明らか ではなかった学習者の読解上の問題点について具体的な内容を把握することができた。しか し、アンケート調査で質問項目として扱った「抽象的な意味の単語」 「抽象的な内容の文」 「書 き手の意図や真意」 「未知語の類推」 「集中力の持続」などの問題は,調査で使用された読み 物、学習者の個性、調査の手順の影響を強く受けたためか,発話調査では観察されなかった。 また,学年の差が生じる原因と,それらが理解にどの程度影響を与えるかという問題も残さ れている。これらの問題の解明は今後取り組んでいく必要があると考えている。また、本研 究の結果から、いくつかの読解指導のための示唆を得た。これから、その示唆を活かした読 解の授業をデザインし、それらを試行しながら、今回見られた問題点がどの程度どのように 解消されていくか、観察していくことで、さらなる読解授業の改善に取り組んでいきたいと 考えている。 参考文献 (1) 飯島博之(2003) 「EFL における論説文読解阻害要因調査票の開発」 『茨城工業高等専 門学校研究彙報』第 38 号、9-15 (2) 飯島博之(2004) 「L2 読解における阻害要因に関する考察」 『茨城工業高等専門学校 研究彙報』第 39 号、23-27 (3) 飯島博之(2006) 「EFL 読解における阻害要因と学年差」 『茨城工業高等専門学校研究 彙報』第 41 号、9-15 (4) 小宮修太郎(1996) 「経営学部留学生の専門書読解に関する調査研究-主な困難点と、 読解ストラテジー行使の実態」 『法政大学教養部紀要』第 95 号、239-264 (5) 高崎三千代(2004) 「ピア・チュータリングによる読解過程に関する考察:同一母語 学習者の場合」 『言語文化と日本語教育』 、15-20 (6) 舘岡洋子(1995)「英語母語話者の読解過程-起承転結文の場合」『アメリカ·カナ ダ大学連合日本研究センター紀要』第 18 号、1-33 (7) 舘岡洋子(2005) 『一人で読むことからピア・リーディングへ-日本語学習者の読解 過程と対話的協働学習』東海大学出版会. (8) 近松暢子(2003) 「外国語としての日本語の読み・読解研究」畑佐由紀子編『第二言 語習得研究への招待・ An Invitation to Second Language Acquisition Research in Japanese: In Honor of Seiichi Makino』くろしお出版、67-85 (9) 羅暁勤(2009) 「外国語学習環境における初中級の読解能力の向上に関する一考察- ピア・ラーニングを用いて-」 『日本語教育実践研究フォーラム報告』 、1-9 (10) 和氣圭子(2013) 「中上級日本語学習者の読解における困難点—Think-aloud 法による 事例研究—」 『言語科学研究』神田外語大学大学院、第 19 号、101-115. 使用した読み教材 (1) 近藤安月子・丸山千歌(2008) 『中・上級日本語教科書:日本への招待』 、東京大学出 版会、62-63、99-100. (2) 産能短期大学(2005) 『日本語を学ぶ人たちのための日本語を楽しく読む本・中級』 、 凡人社、82-83. (3) 手島安基(1995) 『日本語長文読解の森:その作成と例題』 、静雅堂、105-106. 添付資料 1: アンケート調査の調査票 日本語読解についての調査1 みなさん、こんにちは。 私はベトナム人日本語学習者の読解実態についての研究を実施しております。みなさんの提出物を授 業改善と私の研究のために使わせていただきたいと思っております。提出物の公表をご承諾いただい た場合、授業、論文や学会発表、研究会等で、データの一部を引用することになります。それ以外の 目的では一切使用しません。 使用の際には提出物の固有名詞をすべて変更・消去することで、個人が決して特定されないようにい たします。なお、後日、使用中止を希望される場合、次の連絡先にご一報いただければ、即刻中止い たします。 なにとぞ、ご協力くださいますよう、お願いいたします。ありがとうございます。 調査者:政策研究大学院大学・国際交流基金修士プログラム 15 期生 トラン グエン バオ ヴィ 連絡先:メール 以下についてご記入ください。この情報は研究上、利用することがありますが、前述したように、公 表の際には個人が特定されないように扱います。 1. 基本情報: 氏名: 学年: 今までの日本語学習期間(~年~月) : 日本語能力試験の合格実績: あなたが日本語の説明文を読む時、わかりにくいと感じる原因はなんですか。以下の項目が下のど の程度に当てはまるか○をつけてください。正しい答えがあるわけではありませんし、成績や評価に 関係があるわけでもありませんので、あなたの実態によって選んでください。 説明文の例:現在学んでいる読解テキストにあり、物語文ではなく、事実を説明する文章; 各科目 (歴史、経済、文学、国際関係など)の参考資料など 1:全く当てはまらない(その原因でわかりにくいと感じたことがない) 2:ほとんど当てはまらない(その原因でわかりにくいと感じたことがとても尐ない) 3: どちらかといえば当てはまる (その原因でわかりにくいと感じたことが、 どちらかと言えばある) 4: ややあてはまる(その原因でわかりにくいと感じたことがある) 5: よく当てはまる(その原因でわかりにくいと感じたことが多い) 1本調査でベトナム語版を使用した。 調査票 添付資料 2: 読み活動の調査で使用した読み材料・2 年生用 あくしゅ 握手 【段落 1】 あくしゅ いっぱんてき 握手はヨーロッパから入って来たものの一つである。日本人の間でもかなり一般的になっ あくしゅ いちど すく あくしゅ う い かた ている。握手を一度もしたことがない日本人は尐ないだろう。しかし、握手の受け入れ方に おも せいじか ばあい こっかい はいくつかのタイプがあるように思える。そのひとつが政治家の場合である。国会のなかだ せんきょみん せいじか あくしゅ すがた あくしゅ ほんとう けでなく、選挙民にも政治家はすぐに握手をしたがる。あの 姿 をみていると握手とは、本当 こころ かよ かよ あいて たい こうい に 心 が通ってはいないのに、通っているようにみせなければならない相手に対する行為の せいじか けっ じぶん つま あくしゅ ようにもみえてくる。そのような政治家でも決して自分の妻や子とは握手をしないだろう。 ばあい ほんとう した こうてき ば あいて からだ ふ め い し あいて 日本人の場合、本当に親しい時は、公的な場では相手の 体 に触れない。目で意志を相手に つた ほう おお 伝える方が多いのである。 【段落 2】 さいしょ こま あくしゅ あいて ばあい ふじん 日本人がヨーロッパへ行って、最初に困るのも握手である。相手が何人かいる場合は婦人 はじ て さ ふじん ほう しゅうかん あくしゅ たちから始めるが、手を差し出すのは婦人の方から、という習 慣 がある。握手をしている い ことば きこく ほんとう ざんねん こころ けんこう はってん 時に言う言葉もある。 「あなたの帰国は本当に残念ですが、 心 から健康と今後の発展とご かぞく ぶ じ いの ことば 家族の無事を祈っています…」というような言葉がながながとつづく。その間、こちらはず て にぎ こま おお っと手を握られていて、どうしたらいいか困ることも多い。 【段落 3】 あくしゅ げんそく みぎて ひだりて みぎて くら よご 握手は原則として右手でしなければならない。左手はヨーロッパでも右手に比べると汚 て みぎて あくしゅ ひだりて れた手なのである。では右手のない人と握手する時はどうしたらよいのか。この時、左手を たいへんしつれい わたし けいけん みぎて だ あいて 出すと大変失礼なことになる。私 の経験ではそのような人にも右手を出すと相手はじょう ひだりて まわ あくしゅ わたし げしゅく いえ おく わたし ずに左手を回して握手してくれるのである。 私 が下宿していた家の奥さんは、ある日 私 いえ かえ せんたく みぎて かのじょ いそ が家に帰った時洗濯でもしていたらしく、右手はせっけんがたくさんついていた。彼女は急 て こう みぎて こう さ たが みぎて こう あ あくしゅ か いで手の甲をふいて右手の甲を差し出した。お互いの右手の甲を合わせて握手の代わりに したことがあった。 【段落 4】 あくしゅ むかし けいやく せいりつ かくにん こうい ほうりつてき こうい 握手は 昔 から契約の成立を確認するための行為であった。つまり、法律的な行為であ て ひら やわ ぶぶん あ あいて いしき も った。手の平の柔らかい部分を合わせるのは、相手と一つだという意識を持つためだった。 じっさい て ほう こ う い だいじ い み ほうけん じ だ い かしん 実際、手は法行為の上で大事な意味をもっていた。封建時代では、家臣になりたい人間が りょうて あ しゅじん て じぶん て つつ しゅじゅう けいやく せいりつ 両手を合わせる。そして、主人がその手を自分の手で包むと、主 従 の契約が成立した。こ かた ちゅうせい きょう りょうて あ いの かんしゅう かんが のやり方が中 世 のキリスト 教 に入って、両手を合わせて祈る慣 習 が生まれたと 考 える がくしゃ いぜん きょうかい いの りょうて 学者もいる。それ以前のキリスト教 会 では、祈る時は両手を高く上にあげていたのである。 【段落 5】 わたし した もの たが て にぎ しゅうかん す あくしゅ 私 は親しい者がお互いに手を握りあう習 慣 は好きである。しかし握手は二人の間でし て う て じ しゅうかん あくしゅ おな けいやく かできない。日本には手打ち(手締め)という習 慣 がある。これも握手と同じように契約の せいりつ かくにん こうい て じ げんき て う きょうどう かんけい 成立を確認する行為であるが、手締めは何人もの人が元気よく手を打ち、 共 同 の関係が せいりつ かみ かくにん こうい わたし ほう ひろ 成立したことを神の前で確認する行為である。 私 には、こちらの方が広がりをもっている ように思える。 (阿部謹也『逆光のなかの中世』日本エディタースクール出版部より) (産能短期大学(2005) 『日本語を学ぶ人たちのための日本語を楽しく読む本・中級』 、 凡人社、82-83) 添付資料 3.1:読み活動の調査で使用した回答シート・ボトムアップ読み用(省略) シート(1) 各段落の内容をまとめてください。 Hãy tóm tắt đoạn văn văn Đoạn 1(段落 1) : Đoạn2(段落 2) : Đoạn 3(段落 3) : Đoạn 4(段落 4) : Đoạn 5(段落 5) : シート(2) 「話題」についてわかったことをこの文章を読んでいない人のためにわかりやすく、詳しく (図、表、箇条書きなど)まとめてください。 Hãy trình bày bạn biết “話題” cho người chưa đọc văn cách dễ hiểu cụ thể (có thể dùng biểu đồ, bảng biểu, gạch đầu dòng v.v ) 添付資料 3.2: 読み活動の調査で使用した回答シート・トップダウン読み用(省略) シート① タイトル(tựa đề): 「話題」 このタイトルを読んで思いついたこと、連想したこと、このタイトルの文章の内容について の推測できることを箇条書きで書いてください。 Bạn viết bạn liên tưởng suy đoán bạn nội dung đoạn văn bạn đọc từ tựa đề theo dạng gạch đầu dòng シート②(個人用)とシート③(共用) 「話題」についてわかったことをこの文章を読んでいない人のためにわかりやすく、詳しく (図、表、箇条書きなど)まとめてください。 Hãy trình bày bạn biết “話題” cho người chưa đọc văn cách dễ hiểu cụ thể (có thể dùng biểu đồ, bảng biểu, gạch đầu dòng v.v ) 添付資料 4:アンケート調査の結果集計2 全体 No 言 語 知 識 関 連 情 報 統 合 関 連 ス キ ー マ 活 用 関 連 メ タ 認 知 関 連 動 機 付 け 関 連 2 年生(87) 年生(62) 問題点 平均 SD 平均 SD 平均 SD 問1 語彙力が不足 3.99 0.82 4.11 0.79 3.81 0.82 問 15 複雑な文法構造 3.81 0.92 3.80 0.91 3.81 0.95 問2 文法の知識が不足 3.55 0.89 3.64 0.86 3.42 0.92 問 22 多くの意味がある文法 3.34 1.01 3.36 1.03 3.31 0.98 問7 多くの意味がある単語 3.11 0.97 3.07 0.97 3.16 0.97 問9 抽象的な内容の文 3.42 1.04 3.36 1.05 3.50 1.01 問3 書き手の意図や真意 3.37 0.92 3.08 0.78 3.77 0.95 問 25 抽象的な意味の単語 3.35 0.97 3.33 1.05 3.38 0.85 問 16 文章全体の中での重要ポイント 3.00 0.90 3.08 0.85 2.89 0.97 問5 代名詞の理解 2.95 1.00 2.83 0.94 3.11 1.05 問 23 文と文の相互の関係 2.87 0.93 2.80 0.91 2.97 0.95 問 11 各段落のトピックセンテンス 2.75 1.02 2.98 1.01 2.44 0.94 問 20 各段落の役割/段落相互の関係 2.60 0.86 2.56 0.77 2.67 0.98 問 10 未知語の類推 3.12 1.02 3.30 1.04 2.87 0.93 問4 背景知識の有無 3.05 0.92 3.00 0.95 3.12 0.86 問 27 文章の論理の発展 2.95 1.01 2.85 0.94 3.10 1.07 問 13 背景知識の利用 2.73 1.07 2.94 1.04 2.44 1.03 問6 話の次の内容の予測 2.71 0.92 2.71 0.93 2.70 0.91 問8 わからないところに遭遇したときの対応 3.01 1.19 3.11 1.21 2.87 1.14 問 18 自分が読んだ内容の理解度の把握 2.75 0.93 2.78 0.95 2.71 0.90 問 12 読んできた部分の内容を忘れている 2.55 1.13 2.67 1.13 2.38 1.11 問 14 読む目的の認識 2.48 1.07 2.57 1.11 2.34 1.00 問 26 集中力の持続 3.32 1.18 3.39 1.11 3.21 1.26 問 19 文章の内容への関心 2.76 1.00 2.90 1.00 2.56 0.97 問 21 書き手の意見への評価 2.01 0.89 1.94 0.78 2.10 1.02 問 24 読解という作業への関心 1.88 1.01 2.01 1.14 1.70 0.75 問 17 日本語の学習への関心 1.80 0.85 1.80 0.84 1.79 0.86 調査票の質問項目の表現を省略した。ここで使った表現は考察でも使う。 添付資料 5: 読み活動における発話調査の結果集計3 空欄は出現が確認されないものである。 ... ? ?2 文法の知識が不足 3. 55 0.89 3. 64 0.86 3. 42 0. 92 問 22 多くの意味がある文法 3. 34 1.01 3. 36 1. 03 3 .31 0.98 問7 多くの意味がある単語 3. 11 0.97 3. 07 0.97 3. 16 0.97 問9 抽象的な内容の文 3. 42 1.04 3. 36 1.05 3. 50 1.01 ? ?3 書き手の意図や真意 3. 37... 自分が読んだ内容の理解度の把握 2. 75 0. 93 2. 78 0.95 2. 71 0.90 問 12 読んできた部分の内容を忘れている 2. 55 1. 13 2. 67 1. 13 2. 38 1.11 問 14 読む目的の認識 2. 48 1.07 2. 57 1.11 2. 34 1.00 問 26 集中力の持続 3. 32 1.18 3. 39 1.11 3 .21 1 .26 問 19 文章の内容への関心 2. 76... 3. 37 0. 92 3. 08 0.78 3. 77 0.95 問 25 抽象的な意味の単語 3. 35 0.97 3. 33 1.05 3. 38 0.85 問 16 文章全体の中での重要ポイント 3. 00 0.90 3. 08 0.85 2. 89 0.97 問5 代名詞の理解 2. 95 1.00 2. 83 0.94 3. 11 1.05 問 23 文と文の相互の関係 2. 87 0. 93 2. 80