上代の文学 歴史背景 ❖ ❖ ❖ 文学 ❖ ❖ ❖ ~ 8世紀末 政治的には国家が統一と制度の完成 に向かった時代 文字を持たなかった日本人が漢字とい う文字と出会う 延暦13年(794)、都が平安京に遷るま での、主に大和に都があった時代の文 学 神話・伝 説・歌謡・和歌・漢詩文・伝記 ・歴史・地誌など 国家の体制の整備を背景に成立した 神話・歴 史 ❖ ❖ 地誌・伝 承 ❖ ❖ 『古事記』稗田阿礼が伝承していた古代の歴史を、太安万侶が筆録 編集したもので、神代から推 古天皇(在位593~629)までを収める。 『日本書紀』舎人親王撰。日本最古の官撰の史書で、神代から持統天皇(在位 687~ 697)までを 収める。 『風土記』元明天皇が諸国に撰進を命じた地誌で、常陸・播磨・出雲・ 豊後・肥前の五箇国が現存 する。各国の地理や物産のほか、地名などに関わる伝承を 記録する。 『古語拾遺』807に撰進したもので、 『古事記』 『日本書紀』を補う古代伝承の資料として注目される 漢詩文・ 伝記 ❖ ❖ 『懐風藻』中国文学の影響下に生まれた現存する日本最古の漢 詩集、120首。 漢文の伝記:恵美押 勝・延慶撰の藤原鎌足と子息の伝 『家伝』、淡海三船撰の鑑真の伝 『唐大和 上東征伝』 和歌 『万葉集』 全20巻 作者は天皇から庶民 に及び、約4500首を収めている。 万葉仮名で書かれている。 主な歌人 として柿本人麻呂・山上憶良・山部赤人・大伴家持らがあり、上代のみならず日本文学を代表 する 中古の文学 歴史背景 文学 ❖ ❖ ❖ 平安時代ー貴族の時代 都が平安京に遷ってから、鎌倉幕府が成立する までの約 400年間で、ほぼ 100年ごとに、初期・中期・後期・末期(院政 期)に分ける 平仮名の普及 ❖ 初期:公的な文学として漢詩文。物語と 説話集が現れた ❖ 中期ー後期:王朝文学の最盛期と言える時代。日記や随 筆、軍記も登場した ❖ 末期:中世文学の胎動期 物語 歌謡 『竹取物語』伝奇的浪漫的な話です。 『源氏物語』「物語の出で来はじめの祖」、作り物語の最初の作品 ❖ ❖ 神事、特に宮中の御神楽で用いられる神楽歌、諸社の神事で舞われた東遊(東国風の舞)に伴う東遊 歌、地方民謡である風俗歌 和琴の伴奏で歌われる琴歌を収録した『琴 歌譜』 和歌 ❖ ❖ ❖ 和歌が漢詩文の下風を脱して、公的な文学としての地位を確立した。 最初の勅撰集である延喜5年(905)撰進の『古今和歌集』 『今昔物語集』全31巻1000余話から成り、日本の説話文学を代表する 日記・随筆 ❖ 個人の日々の体験や心情を仮名文で綴った日記文学:紀貫之の 『土 佐日記』、藤原道綱母の『蜻蛉日 記』、『和泉式部日記』、『紫式部日記』、菅原孝標女の 『更級日記』。 随筆文学:清少納言の『枕草子』は、中宮に仕える女房としての生活を踏まえた日記的章段を含む ❖ 歴史物語 歴史物語は、物語の形式・文体で歴史を叙述するもの。 『栄花物語』最初の作品 『大鏡【おおかがみ】』独自の批判的視点に特色を示す 軍記 戦乱を題材にした文学 『将門記』、『陸 奥話記』 中世の文学 歴史背景 ❖ ❖ ❖ 文学特徴 ❖ 鎌倉・南北朝時代の文学: 説話文学:地方や民衆を描いた 紀行文学:旅を素材とした 軍記・史論:現実社会への批判や歴史への関心 隠遁者の文学:不安な日常から人々は救いを求め、仏の教えを説いた法語や 無常観を根 底とした 12世紀末から16世紀までの約 400年間 武士が力を伸ばした。 不安定な政局:政治の実権が武士へ移行した鎌倉時代、天皇が巻き返し を図り混迷した南北朝時代、再び武家の政権となった室町時代、下克上 の安土桃山時代 ❖ 室町・安土桃山時代の文学: 連歌 は庶民にも広まる 文 学・芸能の成立や受容の場で、庶民が大きな影響力を持つ 和歌 ❖ ❖ ❖ 軍記物 戦乱のたびに語り伝えられた英雄伝など 『保 元物語』『平治物語』 :和漢混交文 『平家物 語』:平氏の興亡を語る軍記物語の一大巨編 南北朝の内乱を中心とする『太平記』:政治や社会への鋭い批判 日記・紀行 新しい政治都市鎌倉の誕生によって、東海道は整備され、京と鎌倉を往来する旅を素材として 日記や紀 行文が成立した。 『海道記』 『東関紀行』『十六夜日記』 随筆 ❖ 能・狂言 貴族文化の和歌 史上最大規模の「千五百番歌合」 が催される『新古今和歌集』 藤原定家の撰とされる 『小倉百人一首』 ❖ 隠者(隠遁者・世捨て人):動乱の時代、社会に不安を抱いたり、不満や批判を持ち、出家し て俗世 を離れた。 仏教の無常観を基調とした、鴨長明の 『方丈記』と兼好の『徒然草』は隠者文学の 双璧 ❖ ❖ 能:演劇色を強め、専門の芸能集団(座)も現れ、有力な寺社に所属 しました。 狂言:社会風刺や権力批判を込めて口語で演じられ、やがて能と能の間に上演されるよう になる 近世の文学 歴史背景 ❖ ❖ 文学 ❖ ❖ 17世紀初頭から19世紀後半まで の約270年間 それまでの写本の時 代から刊本 の時代へと移ったこと(出版文化の 普及) 大衆化し、漢詩・和歌といった伝統 的な雅文学から俳諧・小説・芸能 などの俗文学に 至るまで、多彩に 展開した。 前期は上方中心、徐々に文運東 漸して、後期は江戸が中心。 物語・ 小説 ❖ ❖ ❖ ❖ 俳句 ❖ ❖ ❖ 演劇 評論~ 国学 ❖ 仮名草子:仮名で書かれた平易な文学 ー>浮世草子:風俗小説。井原西鶴「御伽草子」 読本:大人向け。上田秋成「雨月物語」、滝沢馬琴「南総里見八犬伝」 滑稽本:庶民生活の中の大衆的な笑いを描いた中本型の小説類。十返舎一九 「東海道中膝栗毛」 式亭三 馬「浮世風呂」 人情本:女性を対象に、会話を多用しつつ芝居や恋愛を描いた中本型の風俗小説、為永春水 『春色梅 児誉美』 寛永10年(1633)に最初の俳諧撰集『犬子集』が刊行されると俳諧は一気に流行しま す。貞門は松永貞 徳を中心とする一派の総称で、俳諧を「俳言を以て作る連歌」と規定し、言 語遊戯による微温的な俳風を 旨としました(おおむね中本か横本)。 松永貞徳→松尾芭蕉「おくのほそ道」「野ざらし紀行」「笈の小文」 →向井去来「去来抄」服部土芳 与謝蕪村・小林一茶 「おらが春」 ❖ 人形浄瑠璃:大坂道頓堀の竹本座と豊竹座が競い合って作品。近松門左衛門 「国姓爺合戦」「曽根崎心 中」「冥途の飛脚」「心中天の網島」「女殺油地獄」 歌舞伎: 「出雲の阿国」 、鶴屋南北「東海道四谷怪談」 ❖ ❖ 儒学:新井白石 「折たく柴の記」 国学:賀茂真淵(ますらをぶり)本居宣長(もののあはれ) 「玉勝間」「源氏物語玉の小櫛」 近代の文学 歴史背景 文学 明治元年~1945 明治維新とともに政治制度・社会 制度が大きく転換する 。 ❖ ❖ 明治時代前半はまた古い文化と新 しい文化の交代期に当たり、 文学 においても、江戸時代以来の系譜 を引く作品と、ヨーロッパ文学の影 響を受けた作品が並 存した。 近代文学の始まった時期=古典 文学の時代の終わり 写実主義 文学の解放。 勧善懲悪は現実と違う。 見たままに書こう。 言文一致→話している通りに書こう。 坪内逍遥『【 小説神髄 】』(評論),二葉亭四迷『【 浮雲 】 』 浪漫主義 古いしきたりから解放され、ルンルン気分。気分がハイになっている。解放された自我を芸術の中にの びのびと表現する。人生の美し い面を強調。 森鷗外『【 舞姫 】』,樋口一葉『【 たけくらべ 】』『にごりえ』 自然主義 きれいごとばかりの浪漫主義を否定。現実の社会と生活を直視し、 人間の醜い暗い面をありのままに えぐり出そうとした。 島崎藤村『【 破戒 】』『夜明け前』 ,田山花袋『【 蒲団 】』『田舎教師』 反自然主義 (余 イジイジ・ドロドロとした人間の醜い面を描く自然主義に対して、 余裕を持って、大所高所から人間を 裕派) 描いた 森鷗外 『青年』『【 雁 】 』『【 高瀬舟 】』(歴史小説),夏目漱石 『【 吾輩は猫である 】』『【 坊ちゃん 】』 『草枕』 錯した官能の世界へ。 耽美派 (後期浪 美こそすべて。美しければ、気持ち良ければそれでいい。時に、倒 永井荷風『【 あめりか物語 】』『ふらんす物語』 ,谷崎潤一郎『【 細雪 】』『鍵』 漫主義) 白樺派 自我の確立と理想的人格を目指す。「愛」「友情」重視。 耽美派と好対照。雑誌『白樺』で活躍。 武者小路実篤 『【 友情 】 』志賀直哉『和解』『【 暗夜行路 】』『城の崎にて』 新現実主義 自然主義・白樺派を批判。しっかりと現実を見据えようとした。近 代的人間の深層心理に迫り、知性的 で分析的な解釈をした。 芥川龍之介『【 羅生門 】』『鼻』『【 トロッコ 】』『蜘蛛の糸』 『地獄変』『河童』 菊池寛『父帰る』 新感覚派 文学を社会問題に結びつけず、ひたすら芸術の枠に閉じこもる。 川端康成『【 伊豆の踊り子 】 』『【 雪国 】』『千羽鶴』 ノーベル文学賞受賞 新興芸術派 新感覚派を受け継ぎ、プロレタリア文学に対抗。 『文芸時代』を中 心に活躍。 井伏鱒二「【 山椒魚 】」「黒い雨」 プロレタリア文 学 「労働者よ、団結して資本主義を打倒せよ。」のスローガンのもと、 真正面から社会問題に取り組む。小 林多喜二『【 蟹工船 】 』 宮本百合子『伸子』 現代文学:大衆化、自由化