河口デルタの発達過程に対する砂浜長の影響 田中 仁1・Dinh Van DUY2・三戸部佑太3・Nguyen Trung VIET4 1フェロー会員 東北大学大学院教授 工学研究科土木工学専攻 (〒980 8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 6 6[.]
土木学会論文集B3(海洋開発), Vol 73, No 2, I_516-I_521, 2017 河口デルタの発達過程に対する砂浜長の影響 田中 仁1・Dinh Van DUY2・三戸部佑太3・Nguyen Trung VIET4 フェロー会員 東北大学大学院教授 工学研究科土木工学専攻 (〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 6-6-06) E-mail: hitoshi.tanaka.b7@tohoku.ac.jp 学生会員 東北大学大学院工学研究科土木工学専攻 (〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 6-6-06) E-mail: dvduy19@gmail.com 正会員 東北学院大学講師 工学部環境建設工学科 (〒985-8537 宮城県多賀城市中央 1-13-1) E-mail: yuta.mitobe.c5@tohoku.ac.jp Thuy Loi 大学准教授, Faculty of Civil Engineering(175 Tay Son, Đong Da, Hanoi, Vietnam.) E-mail: nguyentrungviet@tlu.edu.vn 近年,各地の河口部において深刻な侵食現象が見られる.このような河口デルタの発達と汀線後退を論 ずる際,線形近似された拡散方程式型のワンラインモデルの解析解を使用することがある.ただし,通常 使用される解析解は無限長の砂浜に注ぐ河川を対象としている.このため,実際に存在する岬などの砂浜 端部の影響を加味することが出来ない.そこで,有限長さの砂浜に発達する河口デルタに関する理論的検 討を行った.その結果,無次元時刻 t*が 0.3 よりも短い時間の間では境界の影響が現れず,既往の解が適 用できることが分かった.また,無次元時刻がこの限界時間より大きい時には放物線形状の汀線が平行移 動する単純なデルタ発達過程を示しており,この時,河口から境界にかけて漂砂量は直線的に減少する. 実験値を用いてこの理論の検証を行った. Key Words : River mouth delta, one-line model, analytical solution, rigid boundary, Cua Dai River mouth, Tenryu River mouth はじめに そこで,本研究においては,拡散方程式近似されたワ ンラインモデルの基礎式を用い,砂浜が有限な長さを持 近年,河川流域から海域への土砂供給の減少により, 河口デルタ周辺において顕著な海岸侵食が見られる事例 つとの境界条件のもとでのデルタ発達に対する解析解を 得た.これと,Larson et al 4)による無限長砂浜域に対する が国の内外を問わず多くの箇所において報告されている. 解と比較を行い,河口デルタ発達に対する砂浜長の影響 を評価した.また,Refaat5)により実施された,有限長砂 ベトナム中部に位置するツゥーボン川河口左岸に位置す るクアダイ海岸においては最大で約150mの汀線後退が 浜端部境界の影響を受けた河口デルタの形成過程に関す 見られ,現在も深刻な海岸侵食が進行している .著者 る室内水理実験結果との比較により,理論の妥当性を検 らはその侵食機構に関する研究を進めている .我が国 証した. 1) 2) においては天竜川河口右岸において深刻な侵食が報告さ れている3). このようなデルタ地形発達に対するワンラインモデ ルの厳密解がLarson et al.4)により得られている.しかし, 端部境界の影響を受ける河口デルタの発 達の事例 その対象域は-∞