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コンビニエンスストアの経営における営利性と社会性の関係 -高齢者向けサービスに着目して-

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ベトナム国家大学ハノイ校日越大学 地域研究プログラム日本研究専攻 修士学位論文 コンビニエンスストアの経営における営利性と社会性の関係 -高齢者向けサービスに着目して- 地域研究プログラムコード:8310604.01QTD 指導教員 VO MINH VU 博士 学位申請者 BUI THI HUYEN DIEU (学生番号:18110012) ハノイ、2020 年 論文要旨 高齢化の進行に対応するために、日本では多くのコンビニエンスストアが高齢者向けサー ビスを開発している。企業の社会的責任が重視される今日では、コンビニエンスストアは営 利拡大のみに目を向けているわけではなく、移動販売や宅配といった高齢者向け買い物支援 サービスの展開を通じて買い物弱者をはじめとする社会問題の解決に貢献しようとしている。 本研究では、コンビニエンスストアの高齢者向けサービスに注目し、それについて考察する ことを通じて、コンビニエンスストアが営利性と社会性の関係についてどのように考えてい るのかを検討する。それとともに、コンビニエンスストアが、社会貢献を経営に取り入れる 上で、コンビニエンスストア自身をどのように認識しているのかを明らかにしたい。 現在までに、コンビニエンスストアに関しては、多くの研究が行われている。経済学の観 点に基づく従来の研究では、コンビニエンスストアの進化史、経済的な成功、ビジネスモデ ルなどに焦点を当てている。他方で、経済社会学の視点に基づく従来の研究では、コンビニ エンスストアと社会との関わりを中心に考察が行われている。しかし、いずれの研究でも、 コンビニエンスストアの営利性あるいは社会性のどちらか一方を強調しており、両者の関係 に対するコンビニエンスストアの認識についてはまだ明確にされていない。 そこで本研究の目的は、高齢化が進むなか、コンビニエンスストアが、営利性と社会性の 関係をどのように考えているのかを明らかにすることにある。この目的を達成するために、 筆者はコンビニエンスストア企業及び高齢者に対するインタビュー調査を行った。また、イ ンタビュー調査から得られた情報を分析するとともに、一次・二次資料と関連文献の調査も 行った。 本論文の結果として、コンビニエンスストアの高齢者向けサービスは社会性のもとで展開 されていることが明らかにされた。また、その背景にあるのは、社会問題の解決を通じて経 済的価値と社会的価値を創造するという考え方である。このことから、高齢者向けサービス だけではなく、ほかの商品・サービスも含めたコンビニエンスストアの経営全体についても、 社会性という新たな切り口から捉えることができると考えられる。そして、企業が提供する サービスを社会性という切り口で捉える視点は、高齢化という社会問題の進展のなかで、コ ンビニエンスストアをはじめとする民間企業による高齢化問題の解決の可能性を模索する手 がかりにもなると言えよう。 i 目次 序論 1 研究背景と研究目的 1.1 研究背景 1.2 研究目的 2 先行研究 2.1 営利性と社会性に関する研究 2.2 コンビニエンスストアと社会との関係に関する研究 3 研究方法 3.1 インタビュー調査 3.2 一次・二次資料と関連文献調査 4 論文の構成 第一章 日本のコンビニエンスストア業界の概観 10 1.1 コンビニエンスストアの概観 10 1.1.1 コンビニエンスストア尐史 10 1.1.2 コンビニエンスストアの取扱商品・サービス 15 1.1.3 コンビニエンスストアの社会貢献 16 1.2 日本社会の高齢化とコンビニエンスストアの顧客の変化 19 1.2.1 日本社会の高齢化 19 1.2.2 コンビニエンスストアの顧客の変化 22 第二章 コンビニエンスストアの営利性と社会性の関係についての認識-セブン‐イレブン を事例に 30 2.1 日本社会の高齢化とコンビニエンスストアとの関係についての認識 30 2.1.1 セブン‐イレブンについて 30 2.1.2 営利性の側面での認識 32 2.1.3 社会性の側面での認識 33 2.2 営利性と社会性の両立についての認識 35 2.2.1 コンビニエンスストアにおける CSV の考え方の定着 35 2.2.2 CSV 事業の創出 38 第三章 高齢者向けサービスの実施状況 40 3.1 買い物支援サービスの展開の経緯 41 3.1.1 移動販売 41 3.1.2 宅配 43 3.2 移動販売と宅配事業の事業システム 47 3.2.1 移動販売の事業システム 47 ii 3.2.2 宅配の事業システム 48 3.3 高齢者向けサービスに対する一検討 50 3.3.1 営利性と社会性の両立 50 3.3.2 高齢者向け買い物支援サービスの課題 53 結論 56 参考文献 53 付録 63 iii 表一覧 表 0-1:CSR と CSV の比較 表 1-1:コンビニエンスストア大手三社の店舗で利用可能なサービス 16 表 1-2:コンビニエンスストアの社会貢献の取組目標 17 表 1-3:コンビニエンスストアセーフティステーション活動 18 表 1-4:食料品アクセス困難人口(2015 年) 26 表 1-5:買い物弱者の問題への取組 27 表 3-1:「セブンあんしんお届け便」の展開状況(2019 年 11 月 22 日現在) 41 表 3-2:「ローソンフレッシュ」の「カート購入」場合の配送料(税込価格) 45 表 3-3:「セブンミール」の売上推移 49 表 3-4:インタビュー調査協力者の基本属性の情報 52 図一覧 図 1-1:百貨店・スーパーマーケット・コンビニエンスストアの年間売上高推移(千億円) 13 図 1-2:コンビニエンスストアの売上高・店舗数推移(千億円、店舗) 14 図 1-3:コンビニエンスストア全体に占める大手三社の全店売上高推移(十億円)及び合計 シェア(%) 15 図 1-4:日本の高齢化の推移(万人) 20 iv 図 1-5:日本の高齢化率の推移(%) 21 図 1-6:セブン‐イレブンの来店客の高齢分布の変化(%) 23 図 1-7:人口の年齢分布の変化(%) 24 図 1-8:世帯为の年齢階級別消費支出(二人以上の世帯)(円) 25 図 2-1:コンビニエンスストア全体に占める大手三社の合計シェア 2018 年度(%) 31 図 2-2:セブン‐イレブンの売上高・店舗数推移(千億円、店舗) 31 図 2-3:セブン&アイ HD の CSR 統括委員会の組織図 36 図 2-4:セブン‐イレブンの企業行動委員会の組織図 36 図 2-5:買い物支援サービスにおける経済的価値と社会的価値の追求 37 図 3-1:「セブンミール」の利用会員の年齢分布(2017 年 月現在) 50 v 序論 研究背景と研究目的 1.1 研究背景 コンビニエンスストアはもともとアメリカにおいてスーパーマーケットを補完するために 発展した業態である。アメリカを手本にしてスタートした日本のコンビニエンスストアは、 現在では広く普及し、人々に親しまれ、今や日本人の日常生活になくてはならない便利な存 在になっている。また、コンビニエンスストアは社会の変化に敏感に反応して、迅速な対応 を取ることが可能である。とりわけ、日本の高齢化の進行を背景にして、コンビニエンスス トア各社は積極的に対応し、高齢者向けサービスの充実に力を入れている。 高齢化といった社会の変化は、コンビニエンスストア業界のみならず様々な業界の企業活 動に影響を与える。最も考えやすいのは顧客層の高齢化という影響だが、その他に、「企業 と社会」というテーマの下で議論した研究では、企業がそれまで採用してきた経営戦略にも 変化を引き起こすことが指摘されている(丹下 2014:ii; 大滝 2019: 21)。具体的には、社 会的問題の解決に注目する社会性が企業の経営の視野に入れられるべきという为張である。 また、今日の企業人の社会貢献意識が高まっているということも確認される(安齋 2016: 145)。このことも考えれば、丹下(2014)が述べるように、今後の企業経営における社会性 を捉えることがますます重要になってきていることには疑いの余地がないだろう(丹下 2014: iii)。 こうした社会的及び学術的な背景から、本研究では、コンビニエンスストアが社会貢献を 経営に取り入れる上で、コンビニエンスストア自身についてどのように認識しているのかと いう問いを立てた。とりわけ、コンビニエンスストアが、高齢者向けサービスを提供する上 で、コンビニエンスストア自身をどのように認識し、そしてその認識はコンビニエンススト アの経営にとってどのような意味を持つのかという問いを考えたい。 コンビニエンスストアに関しては、多くの研究が行われている。経済学の視点に基づく従 来の研究では、コンビニエンスストアの進化史、経済的な成功、ビジネスモデルなどに焦点 を当てている。他方で、経済社会学の視点に基づく従来の研究では、コンビニエンスストア と社会との関わりを中心に考察を行っている。こうした研究から、コンビニエンスストアは 社会に深く関わり、社会の変化とともに品揃え・サービスは絶えず移り変えていくことが確 認できる。また、コンビニエンスストアの社会の中での位置付けに関しては、コンビニエン スストアが商店としての役割を超え、様々な社会的な役割を担いつつあるとも言える。しか しながら、いずれの研究でも、コンビニエンスストアのサービスの展開の背後にある、コン ビニエンスストアがコンビニエンスストア自身についてどのように認識するのかについては まだ明確にされていない。 本論文では、こうした従来の研究でいまだに十分に考察されていない点を解明するために、 コンビニエンスストアの営利性と社会性についての認識を検討する。本論文の学術的な意義 は、コンビニエンスストアのコンビニエンスストア自身についての認識を明らかにすること が、高齢者向けサービスだけではなく、ほかの商品・サービスも含めたコンビニエンススト アの経営全体についての理解に対する一助になるということにある。また、本論文の社会的 な意義は、高齢化という社会問題の進展のなかで、コンビニエンスストアという民間企業を 手法とした高齢化問題の解決を模索する手がかりになることにある。 1.2 研究目的 本研究の目的は、高齢化が進むなか、コンビニエンスストアが、営利性と社会性の関係を どのように考えているのかを明らかにすることである。とりわけ、①日本社会の高齢化とコ ンビニエンスストアとの関係への認識を究明するとともに、②高齢者向けサービスにおける 営利性と社会性の関係への認識も考察する。①に関しては、営利性の側面と社会性の側面に 分け、コンビニエンスストアの対応と認識を検討する。すなわち、高齢者層の増加という 「顧客層の変化」に対するコンビニエンスストアの対応と、高齢化という「社会問題」に対 するコンビニエンスストアの役割への認識を検討する。②に関しては、移動販売と宅配とい った高齢者向け買い物支援サービスを取り上げ、それらのサービスを展開する上で、コンビ ニエンスストアの営利性と社会性の関係をどのように考えるのかを考察する。 先ほど取り上げた「高齢化が進むなか、コンビニエンスストアは営利性と社会性の関係を どのように考えるのか」というリサーチクエスチョンに対する筆者の仮説は、「コンビニエ ンスストアが高齢化という社会問題を機会として捉え、その問題の解決を戦略的に経営に取 り入れ、社会貢献できるサービスを通じて営利性と社会性の両立を目指す」というものであ る。こうした仮説を設定する根拠は、研究背景で述べたように、今後の企業経営における社 会性を捉えることが重要になることにある。それに加えて、次章で詳述するが、コンビニエ ンスストア企業が様々な社会貢献活動に取り組んでいることも、この仮説のひとつの根拠と なる。 個々の店舗の経営方針を把握するのは困難であるため、本研究では本部の認識を分析対象 とする。 2 先行研究 本研究に関連する研究には、営利性と社会性に関する研究及びコンビニエンスストアと社 会との関係に関する研究がある。前者に関しては、まずは企業の社会的責任に関する研究に ついて述べたうえで、営利性と社会性の両立に関する研究を取り上げながら、本研究で採用 していく社会性の解釈について説明する。その前に、ここでは、社会という言葉の概念を検 討することにする。伊藤陽一によれば、社会は「人間が集まって共同生活を営む、その集団。 諸集団の総和からなる包括的複合体」と定義され、そこには「自然的に発生したものと、利 害・目的などに基づいて人為的に作られたものとがある」とされている 1。また、現代社会学 辞書では、社会は、「諸個人の個々の関係行為(コミュニケーション)の接続が固有の秩序 を形成し、個々の要素的行為にまで分解したときには見失われてしまうような集合的な諸現 象を生成することで、これら関係行為の集合が外部から境界区分されるような統一性を呈し ているとき、その集合を「社会」と呼ぶ」と定義されている2。これらの定義から読み取れる のは、社会という集合あるいは団体では、そのなかで存在している個々の関係性が発生して いるのである。本研究の範囲では、コンビニエンスストアとその立地地域、それにコンビニ エンスストアと高齢の顧客の関係について考察するということを考えた上で、社会を次のよ うに定義していく。それは、ある場所に複数の人々が集まり、相互に結び付き、影響を与え 合い、いろいろなやり取りをするようになったとき、そこには社会があるということである。 2.1 営利性と社会性に関する研究 (1) 企業の社会的責任に関する研究 企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)という用語については、多 様な人々がさまざまな意味合いを込めながら解釈している。 丹下(2014)は次のように指摘する。 企業の社会的責任は経済为体としての本来的機能を全うする「経済的責任」と「企業市 民としての責任」に大きく分けられ、後者の責任はさらに細かく①法的規制を遵守する 「遵法的責任」、②社会に悪影響を与えない「倫理的責任(また道義的責任)」および③ 社会責任によって社会を良くするための「貢献的責任」の3つに分類される(丹下 2014: 10)。 丹下によれば、企業の社会的責任と社会貢献は区別されるべきである。これに関して、丹 下は次のように指摘する。 伊藤陽一「社会の定義について」『日本世間学会』2018 年 月 11 日 http://www.sekengaku.org/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=33 2020 年 月 25 日閲覧 大澤真幸編(他)(2012)『現代社会学辞書』弘文堂:559 「企業市民」としての義務を基盤とする「企業の社会的責任」は規範的な側面が強く現 れるのに対し、「啓発された自己利益」を基盤とする「企業の社会貢献」は戦略的な側面 が強く現れることから、社会的責任と社会貢献は概念的に明確に区別できると考えられる (丹下 2014:10、11) 谷本(2006)は CSR を「企業活動のプロセスに社会的公平性や倫理性、環境や人権への配 慮を組み込み、ステイク・ホルダーに対してアカウンタビリティを果たしていくこと」と定 義している(谷本 2006:59)。谷本によれば、ステイク・ホルダーには、株为、消費者/顧客、 取引先、NPO/NGO、地域社会、政府・行政、従業員が含まれる。 (2) 営利性と社会性の両立に関する研究 企業経営における社会性という概念に関して、牧野(2013)は、「社会性を 「世の中の役 に立つ」 といった意味合いを示す」 と述べる(牧野 2013:77)。また、大滝(他)(2019) の解釈によれば、社会性は「今日の多様な社会的問題の解決に貢献すること」(大滝(他) 2019:12)に等しいと言っても過言ではない。これらの議論では、社会性は今日の企業の経 営戦略に求められる要件であるべきだとも述べられる。大滝(他)(2019)は「戦略的社会 性」という概念を提唱し、それは「企業が既存の市場に関係するステークホルダーのみなら ず、環境・社会面に関わる多様なステークホルダーの社会的ニーズを感知し、短期的には経 済的価値へと結びづけていくことが不可能であったとしても、それを新事業創造などのイノ ベーションを通じて新しい価値創造、市場創造へとつなげ、収益性と社会性を両立させるこ とができること」だとする(大滝(他)2019:317)。 丹下(2016)は企業経営体としての戦略的な意味合いが強い「企業経営の社会性」という 概念を提唱する。企業経営の社会性として、新しい企業理念(営利性と社会性の両立)、社 会的なビジョン、先進的な環境管理システム、エルダーケアの実施、高齢者の積極活用とい う5つのポイントを明示する( 丹下 2016:12、17) 。 大滝(他)(2019)と丹下(2016)では、営利性(収益性)と社会性の両立という考え方 が現れる。これについて考えるに当たっては、 CSV 論を検討しなくてはならない。 CSV (Creating Shared Value:共通価値の創造)はマイケル・ポーターら(2006)(2011)で提 唱された経営モデルである。CSV という概念は、経済価値を創造しながら、社会的ニーズに対 応することで社会的価値も創造するというアプローチであり、成長の次なる推進力となる (マイケル・ポーターら 2011:19)。また、マイケル・ポーターら(2011)は、CSV の3つ のアプローチについて、以下のように述べている。 ① 製品と市場を見直す このアプローチは、社会価値と企業価値の双方を創出するために、社会的ニーズに対応す 小括 本章では、コンビニエンスストア大手三社における移動販売と宅配サービスの実施状況を 見てきた。これらのサービスはまだ模索段階にあるが、将来的にはさらに拡大していくもの と予想される。さらに、コンビニエンスストア大手三社では似通ったサービスを展開してい ることから、営利性と社会性についての考え方、つまり社会問題の解決を通じて経済的価値 と社会的価値を創造するという CSV の考え方は共通している可能性が高い。ただし、三社に おける CSV に対するアプローチに注目すると、セブン‐イレブンとローソンは、自社の独自 サービスを開発する、つまり製品と市場を見直すというアプローチを取っているのに対し、 ファミリーマートが他社のすでに展開するサービスを買収する、つまりバリューチェーンの 再生産を再定義するというアプローチをも取っている。実際、コンビニエンスストアにおけ る買い物支援サービスでは営利性と社会性をある程度両立させられることが確認できる。 また、本章では、コンビニエンスストアにおける買い物支援サービスが抱える課題につい ても検討した。移動販売であれ、宅配サービスであれ、コンビニエンスストアが既存の店舗 販売以外の事業に乗り出すためには、別途コストと従業員が必要となるため、採算をとるこ とが困難な状況に置かれる店舗があるかもしれない。そして、これらの事業に参入する为体 は尐なくないため、競争力を高めることも課題となっている。 55 結論 1.本論文のまとめ 本研究では、高齢化が進むなか、コンビニエンスストアが、営利性と社会性の関係をどの ように考えているのかを明らかにした。具体的には、日本社会の高齢化とコンビニエンスス トアとの関係への認識を究明した上で、高齢者向けサービスにおける営利性と社会性の関係 への認識を考察した。第一章、第二章、第三章での考察とそれによって得られた結果を以下 にまとめる。 第一章では、コンビニエンスストアがどのような業界であるのかを明らかにした。まず、 コンビニエンスストアの歴史とその取扱商品・サービスについて考察した結果、1970 年代に アメリカを手本として始まったコンビニエンスストアは、日本社会に浸透し、売上と店舗数 が拡大するなど発展してきたことが分かった。コンビニエンスストアは、時代の変化や顧客 のニーズの変化に素早く対応できるという特質を生かし、取扱商品とサービスを絶えず変革 し、食料品の販売店にとどまらず各種代金支払いなどできる、日常生活になくてはならない 存在になっている。また、コンビニエンスストア各社は社会インフラとしての役割を果たす ため、地域の安全・安心への貢献、環境への配慮、そして利用者の便利性の向上に取り組ん でいる。そうしたなか、日本の高齢化の進行及びそれに伴う買い物客の高齢化と買い物弱者 の問題は、コンビニエンスストアにとって重要な課題になっている。 第二章では、コンビニエンスストアは営利性と社会性の関係をどのように捉えているのか を考察した。特にセブン‐イレブンを事例としながら、日本社会の高齢化とコンビニエンス ストアとの関係についての認識を営利性と社会性の側面で分析した。まず、営利性の側面で は、高齢者に見合った商品の開発、店舗のレイアウトの調整等を通じて高齢者の来店動機を 増やそうとしている。つぎに、社会性の側面では、「社会的価値を追求したサービスを展開 する」ことがコンビニエンスストアの役割のひとつとして認識されており、高齢者の買い物 弱者への支援を通じた地域貢献を目指した移動販売及び宅配といった買い物支援サービスを 展開している。その背景には、CSV の考え方、具体的には社会問題の解決を手段として経済的 価値と社会的価値を両立させるという考え方がある。 第三章では、コンビニエンスストア大手三社における高齢者向けサービスの実施状態を考 察した。三社による移動販売と宅配サービスは、日常の買い物に困っている高齢者を为力客 とし、買い物弱者の問題の解決という点を強調しながら展開されている。また、各社は、買 い物支援に加えて高齢者の安否を確認する「見守り」活動も行っている。移動販売および宅 配サービスにおける営利性と社会性について検討したとき、まず、サービスの拡大と高齢客 の獲得という観点からは、移動販売と宅配サービスはコンビニエンスストアにとって重要で、 56 かつ有望な事業として位置づけられていることが分かった。また、買い物弱者の支援と保護 という観点からは、社会的価値を生み出していると考えられる。つまり、これらの高齢者向 けサービスにおいては、経済的価値と社会的価値の双方が創造されている、言い換えれば営 利性と社会性の両立が実現されている。その一方で、人手不足、競争の激化、事業の採算性 などの課題も挙げられる。 2.リサーチクエスチョンへの回答と仮説の検証 続いて、序論で述べたリサーチクエスチョンへの回答と仮説の検証を行う。「高齢化が進 むなか、コンビニエンスストアは営利性と社会性の関係をどのように考えるのか」というリ サーチクエスチョンに対しては、コンビニエンスストアが事業に社会性を取り入れる、ある いは社会問題を解決できる事業を行うことで、社会とコンビニエンスストアの双方に役立つ 価値を創造することを考えている、と答えることができる。移動販売と宅配サービスでは、 社会側から見れば買い物弱者の問題の解決に貢献するという社会的価値がある一方で、企業 側から見れば収益の創出、新市場の開拓など経済的価値をも生み出している。これらのこと から、「コンビニエンスストアが高齢化という社会問題を機会として捉え、その問題の解決 を戦略的に経営に取り入れ、社会貢献できるサービスを通じて営利性と社会性の両立を目指 す」という仮説はほぼ当てはまると言える。 コンビニエンスストアの営利性と社会性の両立に対する認識を明らかにしたことは、コン ビニエンスストアの経営について考えるための示唆となる。まず、高齢者向けサービスを買 い物支援のような社会的価値を創造する活動と関連付けて考えることができ、高齢者向けサ ービスを単にコンビニエンスストアが提供するサービスのひとつとして見ていたときよりも 明確に理解することができる。そして、従来の研究では、コンビニエンスストアの商品及び サービスが高齢者にもたらす利便性を中心に注目されてきたが、本論文の結果を踏まえれば、 社会問題を解決する、あるいは解決しようとするものとして、新たな切り口から捉えること ができる。 さらに、コンビニエンスストアを経営していく上では地域貢献が重要な価値を持っている ことが明らかになった。このことから、コンビニエンスストアは、地域社会との関わりの中 で自らを、地域の社会問題の解決への貢献を自社の利益に結びつける存在として位置付けて いると言える。セブン‐イレブンへのインタビューから分かるように、買い物支援サービス では、買い物弱者への支援といった社会的価値が追求されており、経済的価値はあまり追求 されていない。日本では、高齢化が進んでおり、将来より一層深刻になっていくのは間違い ない。そうした環境に置かれているコンビニエンスストアは、社会的価値を追求した経営を していくという理想的な考えを採用している、あるいは採用を余儀なくされる。コンビニエ 57 ンスストアは、そもそも営利を追求する企業であり、社会的価値だけで移動販売と宅配サー ビスを展開するわけではないだろう。こうしたサービスの展開を社会的価値の追求として解 釈することは、サービスの理想化にすぎないか、あるいは当面は社会的価値の方が優先され ていると捉えることを意味している。 とはいえ、サービスの展開を通じて、社会的価値と経済的価値が同時に生み出されている ことは否定できない。コンビニエンスストアの高齢者向け買い物支援サービスは社会問題の 解決を目指す事業モデルであり、それを活用しながら買い物弱者の問題に対応することが可 能である。先行研究でもコンビニエンスストア各社がさまざまな社会貢献活動を通じて社会 問題の解決に寄与していることが指摘されてきたが、こうした活動は社会的価値を追求した ものだと捉えられがちであった。それに対して本研究では、コンビニエンスストアが社会性 を経営に戦略的に取り組むことを明らかにした。このことが、先行研究に対する本研究の新 規性だと言える。そして、本研究のような企業の社会貢献活動の捉え方は、買い物弱者の問 題だけではなく、他の社会問題に対する民間ベースでの対策を模索していくことにも繋がる ものである。 3.本研究の課題と今後の展望 本研究では、コンビニエンスストアが、営利性と社会性の関係をどのように考えているの かを明らかにするために、コンビニエンスストア企業に対するインタビュー調査を行った。 それに加え、その考えはどのように実際に行動に移されるのかを考察するなかで、高齢者に 対するインタビュー調査も行った。セブン‐イレブンに対するインタビュー調査では本研究 にとって非常に有益な情報が得られた。ところが、高齢者に対するインタビュー調査では、 サンプル数の限定とサンプルの偏りによりコンビニエンスストアと高齢者の関連性を十分に 示す結果を得られなかったと言わざるを得ない。この点は本研究の手続き上の問題と言える。 また、本研究では、買い物支援サービスにおける営利性と社会性の両立を定性的に検討し たが、サービスの採算性と買い物弱者の解決への貢献についての定量的な分析を行うことは できなかった。より効率的な分析方法に基づいて買い物支援サービスにおける営利性と社会 性の両立を検討することは、今後の課題としたい。 58 参考文献 図書 1) 赤池学・水上武彦(2013)『CSV 経営 : 社会的課題の解決と事業を両立する』NTT 出 版. 2) 安齋 徹(2016)『企業人の社会貢献意識はどう変わったのか:社会的責任の自覚と実 践』ミネルヴァ書房. 3) 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Web 資料 1) 株式会社ローソン「統合報告書 2019 年度」 http://www.lawson.co.jp/company/ir/library/pdf/annual_report/ar_2019.pdf 2020 年 月 20 日閲覧. 2) 経済産業省 コンビニエンスストアの経済・社会的役割研究会「コンビニエンススト アの経済・社会的役割に関する調査報告書 2014 年度」2015 年 月 https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2015fy/000642.pdf 2020 年 月 25 日閲 覧. 3) 経済産業省「商業動態統計調査」(2010~2019 年度) https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syoudou/result-2/index.html 2020 年 月 20 日閲覧. 60 4) 経済産業省「買物弱者・フードデザート問題等の現状及び 今後の対策のあり方に関 する報告書 平成 26」 https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/150427_report_summary_2.p df 2020 年 月 26 日閲覧. 5) コンビニエンスストアの経済・社会的役割研究会「コンビニエンスストアの経済・社 会的役割に関する調査報告書 2014 年度」2015 年 月 https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2015fy/000642.pdf 2020 年 月 25 日閲 覧. 6) セブン&アイホールディングス「CSR Report 2014」 https://www.7andi.com/library/dbps_data/_template_/_res/csr/pdf/2014_all.pdf 2020 年 月 25 日閲覧. 7) セブン&アイホールディングス「CSR Report 2015」 https://www.7andi.com/library/dbps_data/_template_/_res/csr/pdf/2015_all.pdf 2020 年 月 25 日閲覧. 8) セブン&アイホールディングス「CSR データブック 2018」 https://www.7andi.com/library/dbps_data/_template_/_res/csr/pdf/2018_all_03 pdf 2020 年 月 25 日閲覧. 9) セブン&アイホールディングス「事業概要 2015」 https://www.7andi.com/library/dbps_data/_template_/_res/ir/library/co/pdf/20 16_all.pdf 2020 年 月 25 日閲覧. 10) セブン&アイホールディング「コーポレートアウトライン」2016 年度版 https://www.7andi.com/library/dbps_data/_template_/_res/ir/library/co/pdf/20 17_all.pdf 2020 年 月 25 日閲覧. 11) セブン&アイホールディング「コーポレートアウトライン」2017 年度版 https://www.7andi.com/library/dbps_data/_template_/_res/ir/library/co/pdf/20 18_all.pdf 2020 年 月 25 日閲覧. 12) セブン&アイホールディングス「コーポレートアウトライン(2018 年度版)」 https://www.7andi.com/ir/file/library/co/pdf/2019_all.pdf 2020 年 月 11 日閲覧. 13) セブン&アイホールディングス「2019 年 月期 決算補足資料」 https://www.7andi.com/ir/file/library/kh/pdf/2019_0404kh.pdf 2020 年 月 27 日閲覧. 14) セブン&アイホールディングス「2020 年 月期 決算補足資料」 61 https://www.7andi.com/ir/file/library/kh/pdf/2020_0409kh.pdf 2020 年 月 27 日閲覧. 15) 総務省統計局「平成 26 年全国消費実態調査」 https://www.stat.go.jp/data/zensho/2014/pdf/gaiyo3.pdf 2020 年 月 26 日閲覧. 16) 総務省行政評価局 「買物弱者対策に関する実態調査 結果報告書」平成 29 年 月 https://www.soumu.go.jp/main_content/000496982.pdf 2020 年 月 27 日閲覧. 17) 内閣府(2007)『高齢社会白書 平成 18 年度』 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2006/zenbun/html/i1111000.html 2020 年 月 29 日閲覧. 18) 内閣府(2019)『高齢社会白書 平成 30 年度』 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2019/zenbun/01pdf_index.html 2020 年 月 25 閲覧. 19) 日本フランチャイズチェーン協会「社会インフラとしてのコンビニエンスストア宣言」 平成 21 年 月 28 日 https://www.jfa-fc.or.jp/misc/static/pdf/090528.pdf 2020 年 月 22 日閲覧. 20) 日本フランチャイズチェーン協会「コンビニエンスストアセーフティステーション活 動アンケートレポート 2018 年度版」2019 年 月 https://ss.jfa-fc.or.jp/folder/top/img/n_201904251949451t9d3hz8ysrzgkxm.pdf 2020 年 月 22 日閲覧. 21) 日本フランチャイズチェーン協会「コンビニエンスストア統計調査年間集計」(2010 ~2019 年度)https://www.jfa-fc.or.jp/particle/320.html 2020 年 月 20 日閲覧. 22) 農林水産省ウェブサイト「表 食料品アクセス困難人口(2015 年):農林水産政策 研究所」https://www.maff.go.jp/primaff/seika/fsc/faccess/table01.html 2020 年 月 28 日閲覧. 23) 農林水産省 「買い物困難者対策スタート ブック」2017 年 月 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/eat/attach/pdf/torikumi_kata-1.pdf 2020 年 月 29 日閲覧. 24) 農林水産省ウェブサイト「食料品アクセス(買い物弱者・買い物難民等)問題ポータ ルサイト:農林水産省」 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/eat/syoku_akusesu.html 2020 年 月 27 日閲 覧 62 謝辞 本論文は、日越大学地域研究プログラム修士論文とし提出するものです。本論文の執筆に あたっては、大勢の方からのご指導、ご協力と支えをいただきました。ここに記し、心から 感謝いたします。 はじめに、終始温かいご指導と多くのご示唆をいただいた、ハノイ国家大学人文社会科学 大学日本研究学科の Vo Minh Vu 先生に心より感謝申し上げます。Vo Minh Vu 先生からは、研 究のポイントについてご助言と有用な参考資料の提供をいただきました。そして日越大学地 域研究プログラムの Pham Thi Thu Giang 先生、伊藤まり子先生と日越大学の先生方からも貴 重なご支援をいただきました。深くお礼申し上げます。 続いて、ゼンショー東京大学・ベトナム国家大学ハノイ校日本研究拠点プログラムの先生 方と東京大学の先生方に感謝いたします。授業やゼミ活動を通じて多くのご指導やご指摘を いただきました。また、インタビュー調査を行うにあたっては、東京大学大学院総合文化研 究科の岩月 純一教授と東京大学大学院総合文化研究科の佐藤俊樹教授からご支援をいただき、 無事調査を 終えることができました。本研究以外の場でも、東京大学でのインターンシップ にあたっては、生活上のご支援をいただき、本当に貴重で有意義なインターンシップを過ご すことができました。心から感謝いたします。 また、論文作成にあたっては、武内建人さんから細かいご指摘と熱心なご助言をいただき ました。論文の執筆には困難を直面していましたが、議論のポイントを指摘いただいたおか げで迷うことなく時間内に執筆を完了させることができました。誠に有難うございました。 さらに、本研究のインタビュー調査を進めるにあたってご協力とご支援をいただいた株式 会社セブン‐イレブン・ジャパンと回答者の皆様に心よりお礼申し上げます。 最後に、2 年間という長い間、勉強と研究に集中できる環境と経済的な支援をいただいた株 式会社ゼンショーホールディングス、そして日越大学での学びの機会と東京大学でのインタ ーンシップの機会を与えていただいた日越大学に心よりの感謝を捧げます。 付録 付録① セブン‐イレブンに対すインタビュー調査の質問項目 I.日本社会の高齢化とコンビニエンスストアとの関係への認識 1:高齢者層の増加という「顧客層の変化」にどのように対応していますか。 2:高齢化という「社会問題」に対するコンビニエンスストアの役割についてどのように認 識していますか。 63 II.「高齢者向けサービス」を展開している経緯や展開するメリット 3:「セブンらくらくお届け便」「セブンミール」「セブンあんしんお届け」といった買い 物支援サービスを展開する経緯はどのようなものですか。 4:これらのサービスを展開するメリットはどういったところにありますか。 Ⅲ.コンビニエンスストアの経営における「高齢者向けサービス」の位置付け 5:買い物支援サービスは、ほかのサービスや事業とはどのような関係にありますか。 6:買い物支援サービスを展開するうえで、コンビニエンスストアの営利企業としての側面 と社会的な存在としての側面の関係をどのように考えていますか。 IV.「高齢者向けサービス」が抱える課題や今後の見通し 7:「高齢者向けサービス」が抱える課題や今後の見通しはどのようなものですか。 付録② セブン‐イレブンの回答 I.日本社会の高齢化とコンビニエンスストアとの関係への認識 1:高齢者層の増加という「顧客層の変化」にどのように対応していますか。 我々のコンビニエンスストア業態というのは昔から大きくほとんどは変わってはいないで すけれども、この客層に絞ったというターゲット層は明確ではないです。たとえば、若者向 けのブランド品を扱う店は若い女性だったり若い男性がターゲット層だと思いますけれども、 コンビニエンスストアっていろんなものを置いてます。お年寄りから小さな子供までが幅広 く来てもらえる業態がコンビニエンスストアというか小売業と言われるような業態なんです。 でも昨今ですね、非常に高齢化が進んでいるので、たとえば変化で言うと品揃えっていうの が、今まで置いていたのが、たとえば男性向けだったりとか、30 代、40 代向けの商品がほと んど置いてあったものが高齢者向けに食べられるような尐量パックだったりとか、お年寄り の方がそんなに量を食べられないじゃないですか。でも昔のコンビニエンスストアってけっ こう一人用で男性向けお弁当が出てたりとか、どちらかというとカロリーの高いような商品 が出てたりとか、今は高齢者向けだけじゃないですけれども。たとえば、ちょっと健康に良 64 い、体に良い商品を中心に作ったりとか。そう言ったものにどんどんシフト、変化をしてい ます。品揃えをどんどん変えています。後は、レイアウトっていうのも、これも高齢者向け っていう一途にそういうわけじゃないですけれども、いままで来てくださるお客様に買い物 をしやすいように、ちょっと通路幅を広げてみたりとか、買いやすい、手に取りやすい棚の 高さにしてみたりとか、お年寄りの方とかでも見やすいようなレイアウトに変えていて、そ ういった形で高齢者の方も安心してお買い物をできるように今進ませていただいております。 付け加えると、全店ではないですけれども、バリアフリーを導入した、たとえば店舗を入 る時とかに、今まで押して入らなければならないような手動ドアだったお店を全部自動ドア に変えています。トイレの幅とかも広げています。 2:高齢化という「社会問題」に対するコンビニエンスストアの役割についてどのように認 識していますか。 つの課題の中で、高齢化だったりとか、人口減尐と言われる時代の社会インフラを提供す ることでコンビニエンスストアの役割を果たします。商品に対しては、高齢化が進んでいく のは間違いないので、そこにターゲットと合わせた商品だったりとか開発をどんどん進めて いきますし、あと店舗開発に関しても、するところをちょっと重点に考えて、社会インフラ が書いていますけれども、そういった誰しもが今後、お年寄りだけじゃなくて、若い人もそ うですし、女性の方、小さなお子さん、全員が買い物しやすい場所をしっかり提供して、商 品もしっかり提供していくのは我々の使命であり、我々の行うべきことというように認識し ています。 我々は小売業と言われる業態で、今、セブン‐イレブンって 万 千店の日本国内の規模 があるんですね。やはり、買い物する場所、ここで社会インフラが書いてありますね、物を 買える場所をしっかり提供して、地域の方々が安心して暮らせる、「便利だな」と思って買 い物をしてもらえる場所をしっかり提供するのは我々の役割だと思っています。そのために は、たとえば、移動販売とか、宅配とか、待っているだけじゃなくて、私たちが出向いて、 ちょっと商品を提供しようということも入れながら役割として必要かなと思っています。地 域貢献をしていくべき業態であるし、お仕事だと思っていますので、それは役割というよう でやっています。 II.「高齢者向けサービス」を展開している経緯や展開するメリット 3:「セブンらくらくお届け便」「セブンミール」「セブンあんしんお届け」といった買い 物支援サービスを展開する経緯はどのようなものですか。 お届けサービスと言われる支援だったりとか、あと車で商品を運んで地域で売る経緯って いうのは、やはり一つは、買い物する場所がなかなかない人たちが増えてきている、買い物 65 するスペースがなくなっているんですね、東京都内だったらたくさんあります。でも、地方 とか行った時とかに、田舎の方ですね、車で 30 分掛けて、なかなか車にも乗れないとか長距 離に歩けない、そういった高齢者がどんどん増えているなかで、そういった人たちは「買い 物はどうするの」っていうのは買い物難民と言われる方たちが日本でどんどん増えている中 で、我々が社会インフラを提供する業態でもあるわけです。買い物スペースを提供しないと いけないのに、買い物をできない人たちを放っておかないといけないです。そういった人た ちにも買い物してほしいっていう考えのもと、こちらからセブン‐イレブンの商品をトラッ クだったりとかあとは自転車だったりとか近隣のいっぱいの店舗がせっかくあるだから、そ こから配達をしたりとか、移動販売をしたりとかっていうサービスを繋げてより多くのお客 様が喜んでもらうじゃないかっていうのが始まった経緯になります。 4:これらのサービスを展開するメリットはどういったところにありますか。 メリットに関してはたくさんあります。まずは、地域貢献が一つなるんですね。地域にあ る自治体とかにもセブン‐イレブンから商品をこういう物を持ってほしいとお願いしていた だけると、向こうが買い物をしたい、こちらセブン‐イレブンの商品を売れるわけですから、 商売として、売上が上がりますね。そういったウィンウィンの関係が作れます。地域貢献の サービスをすることによって地域になくてはならない存在になっていくと普通のセブン‐イ レブンも当てにされるようになって、来店してくれるお客さんもどんどん増えていきます。 社会貢献として認められるようなこともありますし、周りの店、セブン‐イレブンがいっ ぱいのお店がありますから、セブンイレブンのイメージも上がると思います。 Ⅲ.コンビニエンスストアの経営における「高齢者向けサービス」の位置付け 5:買い物支援サービスは、ほかのサービスや事業とはどのような関係にありますか。 直接的に、ほかのサービスっていうのは、どちらかというと、店舗のなかで行われるサー ビスがメインになってくるんですね。来店してもらうお客さん向けサービスがほとんどなん です。なので、買い物支援って言われるようなサービスと直接的な繋がりがないですけれど も、サービスが一種なんです。こちらがどちらかというと、外の買い物をできない方たち向 けのサービスです。ほかのものは来てくださるお客さん向けのサービスです。 御用聞き、たとえば、商品を持っていくだけじゃなくて、お客様から情報を聞いたりとか して、たとえば、これをコーピーしてほしいっていう要望があった時に、その要望が百パー セントを答えるか分からないですけれども、そういうことを手伝ってあげたいっていうこと もやります。 あと、自治体と連携して、配達をするとき、高齢者の安否の確認を行います。毎日商品を 届けることによって、たとえばその高齢者の健康状態を確認できますし。いつもこの時間に 66 行ったらいるのに、今日がいなかったとかとしたら、それを自治体の方に連絡をして、ちょ っと様相を見に行ってもらうとか、確認してもらうとかっていうようなそういったことも行 っています。 6:買い物支援サービスを展開するうえで、コンビニエンスストアの営利企業としての側面 と社会的な存在としての側面の関係をどのように考えていますか。 もちろん、大きなことを言ってしまうと、我々は商売をしていますので、もちろん売り上 げだったりとか、利益、それがお店の働く資金源になってくるので、それに繋がるようなこ とをやっていかないといけないと考えます。ただし、この「セブンらくらくお届け便」「セ ブンミール」、これに関しては、どちらかというと、社会貢献の意味合いが大きいことでス タートします。困っている人たちが増えています。ここに対して我々がコンビニエンススト アの商品を持っていくことによって、買い物するスペースが増やしていくと、結果的にはど うなるか。社会的買い物難民、買い物弱者の方たちが尐なくなっていきます。結果として、 今まで店舗でしか販売していなかったものが外で売れるわけですので、それはプラスですね。 結果としてはプラスの要素もあります。売れるか売れないか、どれぐらいか分からないです けれど、我々のサービスが社会にとって社会貢献をしています。社会貢献をしているなかで、 プラスで営利として結びついているっていうのがあるかなと思っています。 買い物支援サービスに関しては、売上を取れたらいいよね、でもどちらかというと強い意 識は社会貢献の方ですね。 セブンイレブンにとって、社会貢献というのは、社会インフラを作って、買い物スペース を提供することです。社会貢献を全うすることによって、売上っていうのが作れます。それ は両立っていう言い方をするのかもしれないですけど、すごいお金を儲けたいからとか、す ごい売上を作りたいからやるっていうことではなく、社会的に困っている人を助けるために、 まず一つとしてこれがありますね。向こうが望んでいることをやります。結果的に、社会的 貢献が売上に繋がるということもなります。店舗が動かないですけど、買い物に困っている 人たちのために、ここのミニセブン‐イレブンを作るみたいイメージです。 IV.「高齢者向けサービス」が抱える課題や今後の見通し 7:「高齢者向けサービス」が抱える課題や今後の見通しはどのようなものですか。 高齢者向けサービスが抱える課題がまだたくさんあります。我々は社会インフラを提供し ますと言っていますが、これは全国的にできたかと言われたらまだまだ地域によってまだで きないところもあります。同じサービスは全国でどこでも売れるような状態ではないわけで す。ただし、私たちのメインとなる仕事っていうのがセブン‐イレブンに来てくださるお客 様に商品を提供して買い物をしてもらうことですので、そっちを放って、買い物支援の方に 67 手をいれてしまうと、本業がなかなかうまく回らなかったりとかっていうのがあります。で も、一方で高齢化などの社会課題がどんどん増えていくことがあるので、高齢者向けサービ スがもっともっと独自っていうか特化したサービス、もっとできるような仕組みを作ってい かないといけないと考えます。 今は、お店の方たちは忙しい中合間を縫って商品を配達に行ってもらったりとかっていう ようになってるんですね。そこに行ってもらえる人たちが、人がいれば行けますね。でも今 は人手不足と言われるような時代ですので、ここで人がいなくなってしまったら、買い物支 援サービスをすることも難しくなりますね。今はそのリスクが抱えている状態です。じゃ、 本部から行けるかと言ってしまうと、本部が東京にしかないので、地方に行くのがすごい時 間が掛かります。 今後、買い物支援サービスをする専門の方たちはどんどん増えていきます。そういう方向 性を持っていかないとけないと思っています。もっと楽に高齢者の方が買い物できる方法が ないかと考えないといけないと思います。リスクを相当思っています。行ける行けない店が あります。百パーセントちゃんと買い物できない方たちに商品を届ける仕組みを作っていか ないといけないと思っています。まだできないところがあるという課題があります。 付録③ 高齢者に対するインタビュー調査の質問項目 I 基本属性 お名前はなんですか。 2.お幾つですか。 3.今はどなたと住んでいますか。(単身、夫婦同居、子供と同居) 4.住んでいるところから歩いていける距離には買い物に行ける場所は何ですか。どのくら いありますか。 II コンビニエンスストア利用の実態 5.コンビニエンスストアをどのくらいの頻度で利用していますか。 6.何の目的でコンビニエンスストアを利用していますか。 7.よく利用しているコンビニエンスストアはどこですか。 III コンビニエンスストアの高齢者向けサービス利用の実態 8.これらのサービスのなかで知っているサービスがありますか。(サービスの一覧は次の ページに書いてあります) 9.これらのサービスをどのくらいの頻度で利用していますか。 68 10.これらのサービスに、どのような印象をお持ちですか。自分の買い物生活にどのような 影響を受けていますか。 11.近くにあるコンビニエンスストアで高齢者のニーズを考慮した健康志向の商品、または 薬品・介護用品も置いてあり、いつでも買えるということについてどのように思いますか。 あるいはそうした商品が無い場合、もし置いてあったらどう思いますか。 IV 今後のコンビニエンスストアのありかたについて 12.将来的に自分の生活、特に買い物生活とコンビニエンスストアとの関係はどうなってい くと考えられますか。 13.コンビニエンスストアの高齢者向けサービスに改善してほしい点はありますか。 1. コンビニエンスストア サービス セブン-イレブン 「セブンらくらくお届け便」 「セブンミール」 「セブンあんしんお届け」 2. ファミリマート 「宅配クック 123」 「ファミマ号」 3. ローソン 「ローソンお届サービス」 「ローソン移動販売サービス」 69

Ngày đăng: 01/04/2021, 13:46

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